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個性[1]~世の中は個性が織り成す宇宙  

第1章〈自己〉#01

〈じっと考えてみよう〉

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並びかえの問題を3つ出しました。どうだったでしょう?

Q1とQ2は簡単です。数字の大きい/小さいや、面積の大きい/小さいは、明確に比較ができ、順番に並べること(これを「序列化」という)ができます。

ところが、Q3はどうでしょう。「青っぽくにじんだ丸い形」と「赤くぼんやり発色する星のような形」「複数の色が帯になった台形」───この3つを何かの基準で並べられるでしょうか。

これらはうまく序列化できません。なぜなら、これら3つは、単純な色づきではないし、形や輪郭もまちまちなので、なにか基準を当てはめて比べることが難しいからです。

また、赤や青といった色の世界には、そもそも優劣(ゆうれつ)や上下がありません。赤と青を比べて、赤が優(すぐ)れていて青は劣(おと)っているとか、黄が上で緑は下だとか、そういう序列はありません。形も同様です。丸と星形と台形を比べて、どれがよくてどれがわるいかと判じることはできません。

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さて、人の個性をこの「色」や「形」としてとらえたらどうでしょう。

つまり、あなたの性格は色です。そして身体や考え方は形です。もしあなたの性格が、いろんなことに情熱を燃やそうとする快活的なものなら、それは「赤」という色かもしれません。もし性格が冷静で何ごとにも落ち着いているなら、それは「青」かもしれません。

そしてそれら性格という色を発する器(うつわ)のようなものとして身体がある。世の中には、体が太い人/細い人、背の高い人/低い人、などさまざまいますが、それらは形の違いです。さらには、人の考えや行動にも傾向性や様式(英語では「スタイル」と呼ぶ)といったものがあります。それもこの形の違いとしてとらえることができます。

一個一個の人間は、独自の色(=性格)を発して、独自の形(=身体、思考・行動様式)を持つ生きものです。この色と形の組み合わせが、千差万別の個性をつくりだします。この世の中は、個性という名の宝石が天の川のごとくきらめく場所といっていいでしょう。

そのときに、自分の色や形を他人のそれと比べてどうだこうだと神経質に考えてもしょうがありません。自分は自分であればよいと気楽にかまえることです。個性を出さなければ、と気負う必要もありません。笑いたいときはおおいに笑う。考えを言うときは考えたままをほがらかに表明する。なにか一所懸命になれるものを見つけて、それに打ち込む。すると勝手に個性が出てきます。そして、人から「あなたらしいわね」と言われたなら、それは個性の出ている証拠ですから、すなおに喜べばいいのです。

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もし、あえて比べるとすれば、過去の自分と現在の自分です。

自分の個性が赤色とするなら、「きょうの赤は、きのうの赤よりあざやかだろうか」「今年の赤は去年の赤より深くなっているだろうか」という問いを自分に投げかけてみよう。また、赤といっても、朱色(しゅいろ)もあれば、茜(あかね)色もある、臙脂(えんじ)色もある。自分はどういった赤にしていくかを考えてみるのもいいでしょう。

形にしてもそうです。自分は丸なら丸をきわめてやるという意識が大事です。丸は転(ころ)がすことに向いています。だから自分はどんな転がりを追求していくかを考えるのです。

自分は四角でいくぞと思えば、どんな四角で、どうやってその形を精いっぱい生かしていくかを考える。ある人は箱のような入れ物としてがんばろうと思うかもしれないし、ある人は積み木のような建材として我が道を行こうとするかもしれない。

人の個性に上も下もありません。優も劣もありません。ただ自分が自分らしく、どっしり構えられるかどうかが大事な点です。

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学校の成績があまりよくなくて、自分に自信をもてない人がいるかもしれません。しかし、学校の試験は、人間のごく一部の能力だけを取り出して、計算能力が他人と比べて上だとか、運動能力が平均より下だとかをみているだけです。その人のほんとうの個性をみているものではありません。そもそも個性はとても奥深いもので、試験の点数で簡単に表せるものではないのです。

学校の成績に関係なく、あなたという個性は満天に輝く星々の中の一つです。その輝きは他のだれとも違っています。あなたはその個性と死ぬまで付き合っていくことになりますから、ぜひ自分の個性をおおらかに見つめてください。

●「他人の物真似で二流でいるより、自分らしくあることで一流でありたい」。
―――ジュディ・ガーランド(米国女優)

「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ。
平気でへたに、明るく歌を歌ってやればきっとうらやましがられる。
……しまいには音痴(おんち)でないものが、
頭をさげて音痴同好会に入れてくれといってくるくらい堂々と歌いあげるんだ」。
───岡本太郎(芸術家)

[文:村山 昇/イラスト:サカイシヤスシ]

 


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