「成功」の反対は「失敗」ではない
3.6.3
・リスクとは、恐怖心である。
・リスクとは、機会を得るための代金である。
・リスクとは、成果を手にしたときの燃えカスである。
・リスクとは、新しい世界への入場料である。
・リスクとは、“篩(ふるい)”である。
・リスクとは、アイデアの暴走止めである。
・リスクとは、狙う獲物に生えるトゲである。
・リスクとは、臆病心と引き換えで商売が成り立つものである。
・リスクとは、危うさの予見である。
・リスクは、評価する者の心理によって伸縮するものである。
・リスクとは、成功の神が仕掛けるいたずらである。
・行動のリスクもあるし、無行動のリスクもある。
……これら「リスクとは何か?」についての表現は、私が行ったワークショップで参加者たちが考えた一例である。人によりさまざまな定義が出てくるので面白い。
それで本項では、「成功」と「失敗」と「リスク」を考える。この三者の関係を整理してみたい。まず、次の問いである。
「成功」の反意語は?とくれば、たいてい「失敗」を思い浮かべる。だが、はたしてそうだろうか。そんなとき、エジソンのこの言葉はとても重要なことを教えてくれる。
「私は失敗したことがない。うまくいかない1万通りの方法を見つけたのだ」。
失敗は成功までの一つの過程であって、それによって得た経験知は成功までの土台になる。それは大切な「資産」である。成功によって得る獲得物も、もちろん「資産」。だから、成功も失敗も資産側に計上すべきプラス価値のものである。
では、対置するマイナス価値のものは何か?
───それは、「何もしなかったこと」。
臆病心か怠慢心から、座してその機会を見送ったことである。
確かに、私たちは「跳ぶ」(=何か行動で仕掛ける)ことを怖がったり、面倒がったりする。しかし、そのときに意識すべきは、跳ぶことにリスクはあるが、跳ばないことにもリスクがあることだ。
「跳ぶリスク」と「跳ばないリスク」、どちらが大きいだろう?
そしてどちらが負うに値するリスクだろう?
私が考えるのは次の図である。
成功にせよ、失敗にせよ、勇気をもって行動を起こせば、何らかの資産(獲得物、経験知、感動、自信、人とのつながり等)が必ず蓄積される。そして、その中に必ず次の行動の「種」が見つかる。そしてもっと「跳ぼう」と思える循環が出来上がってくる。これが「勇者の上り階段」。
逆に、何もしないことに安住すると、どんどん機会損失は増え、後悔は蓄積され、時間は消費され、臆病癖、怠慢癖が自分に染みつく。「臆病者の下り階段」が知らずのうちに出来上がるのだ。
「勇気は自信に先行する」。───西堀栄三郎