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上司と部下の健全な関係性

4.2.1


◆上司/部下の関係タイプ分け
世の中には、それこそ数え切れないほどの上司と部下がいる。そしてそれらの関係状況も実にさまざまである。上司と部下の関係は、業務を遂行するためだけの機能的で淡白な状況もあれば、個人レベルで双方が親しくなる状況もある。あるいは、上司が半ば恐怖政治のような環境をつくり、部下を服従させている状況もしばしば見受けられる。そんな上司と部下の関係を、関係の深さと健全性の二軸でタイプ分けしたのが次の図だ。


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上司と部下の関係でもっとも基本的でシンプルなものが「監督者/作業者」型である。これは職務遂行のために「私監督する人/私作業する人」という関係で、給料をもらうためには各々がきちんと責任をまっとうする―――それ以上でもそれ以下でもない。

そしてここを中心に右上方向に位置していくのが健全で関係性の深いタイプである。逆に左下に位置していくほど不健全で関係性の浅いタイプになる。

組織内で目指すべき健全な関係は、「指導者(よきリーダー)/賢従者(よきフォロワー)」型だ。この関係性においては、上司も部下も、無機質な「監督者/作業者」よりも相互に信頼感を持ち、より高いレベルの職務遂行に向かって進んでいく姿勢がある。

上の図で、「サポーター/ドリーマー」型「師匠/弟子」型が最も右上に位置づけされている理由は、上司も部下ももはや一組織人という立場を超えて(ときに利害を超え)、夢や志を追い、道を究めようとする一人間同士の啓発的な関係になっている点である。

他方、健全な関係といえないのが、「王様/家来」、「カリスマ/信奉者」、「キツネ/タヌキ」、「暴君/弱衆・下僕」といったものだ。これはいわずもがなである。


◆親分/子分関係の問題点
さて、ここでひとつトリッキーなタイプが指摘される。それは「親分/子分」型だ。親分/子分の関係は独自の信頼関係から成り立ち、ある意味団結が強く、実際に多くの会社では組織を動かす原動力にもなっている。個人的にも親分である上司とウマが合って、寵愛を受け、引き抜き昇進に授かれば部下にとっても悪い話ではない。

しかし、この関係には問題が多い。親分の言ったことになかなか子分は逆らえない。子分の昇進は、親分の社内での政治力や親分への取り入り方のうまさで左右されるところから、子分はやがて太鼓持ちかイエスマンになってしまう。また、派閥めいた固まりは組織に硬直性を持たせることにつながる。そして何より、「親亀こけたら皆こける」の状況が生じることだ。

上司/部下の目指すべきタイプは「指導者/賢従者」だと言ったが、そこでは双方の意識はまず「よい仕事を行う」ことに向けられている。したがって、部下にしても、もし上司が仕事達成のために不適切な指示を出したら、意見を遠慮なく言うことができる。つまり「仕事」が上位で「上司」が下位だからだ。ところが、親分/子分関係では、これが逆の順位になってしまう。仕事の達成を互いが最優先と認識して、それを媒介にしながら、上司と部下が能力を出し合う協力関係が健全な姿といえる。

ちなみに、ピーター・ドラッカーは組織の人間関係につき次のように言っている。

「人間関係の能力を持つことによって、よい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他との関係において、貢献を重視することによって、よい人間関係がもてる。こうして人間関係が生産的となる。生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。

仕事上の関係において成果がなければ、温かな会話や感情も無意味である。貧しい関係のとりつくろいにすぎない。逆に関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはない」。  ───『経営者の条件』より



◆最終的に上司と部下は呼び寄せ合っている
「サラリーマンでいるかぎり、上司は選べない」―――多くの会社員はこう思って(悟って? あきらめて?)いる。……しかし、はたしてそうだろうか。

私がいろいろな組織の、いろいろな上司-部下関係を観察するに、上司と部下は呼び寄せあっているように思える。人は、3年、5年、10年、20年という時間をかけ、その人の内面的な内容・傾向性に応じた環境にみずからはまり込んでいくものである。

志を掲げて高い意識で働いている部下は、優柔不断で明快な意志を持たない上司から次第に離れていき、やがて同じような目的観を強く持った上司をつかまえ、その下に行く。

保身でなぁなぁにやりたいと思っている部下は、やはり保身で適当にやればいいと思っている上司の下で馴れ合い関係を保とうとする。(タヌキとキツネで互いを利し合っている関係性は意外と長続きするものだ)

何かに怯えるように働く部下には、サディスティック(加虐的)な上司がますますサディスティックになる。意気軒昂な部下なら、さっさとそんな上司の下から抜け出してしまおうとするが、心が弱い部下はなぜか鎖を掛けられたようにそこに留まってしまう(ふつうに考えれば不思議なことだが、こういった状況は意外に多い)。

いずれにせよ、部下と上司の人間関係は、仕事上の目的があって、それを実現するための手段でしかない。手段に振り回されるのか、手段をうまく用いるのか、それは自分自身の問題ととらえるべきだ。世の中に悪い上司はたくさんいる。その悪い上司に捕まりっぱなしになるのは自分の問題だ。上司の人格を変えようとしても無駄である。世の中に良い上司はたくさんいる。それを捕まえるのも自分の問題だ。強い目的意識をもって、自分の益になる上司を引き寄せることだ。


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