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人生で一度は「事業主」をやりなさい! ~メンドリの参加と豚のコミット

8.10


アメリカンジョークをひとつ;

In ham and egg, the hen is only participating, but the pig is really committed.

ハム&エッグにおいて、
メンドリ(雌鶏)は参加しているだけだが、ブタはガチでコミットしている。




いつごろからか、ある種の「飲み会」が面白くない。
ある種の飲み会とは、
サラリーマン率の多い飲み会である。

酒席での話題はおおかた仕事や組織の話になる。
 「給料が出て当然」
 「交通費が支給されて当然」
 「ペン1本から個人パソコン1台まで取り揃えてもらうのが当然」
 「これだけ仕事やってんのに会社は・・・」
 「これだけ我慢してんのに上司は・・・」
彼らの愚痴やら持論は、こうしたマインドベースがあって出てくる。

それを聞かされる私のマインドベースは、
 「給料が出るのは当然ではない」
 「交通費が支給されるのは当然ではない」
 「ペン1本から個人パソコン1台まで取り揃えてもらうのが当然ではない。自腹で買う」
 「これだけ仕事やってんのに会社は・・・と自分の事業を責めてもしょうがない」
 「これだけ我慢してんのに上司は・・・そもそも私に愚痴を言う上司はいない」

独立して自分の事業を起こした私(事業主)のベースと
雇われ身である彼らとのベースは根本的に違うのだ。

一方、私にとってベンチャー起業者や独立事業者の集まりは面白い。
皆、リスクを一身に背負っている。
会社員を「ビジネス兵士」と呼ぶなら、こちらは「事業侍」だ。

侍同士が持ち合う、世を渡る緊張感や、孤独感、スピンアウト意識、
妙な美意識や誇り、アウトロー感覚、賭博的な人生感覚、無常観……。

私はここでサラリーマンを揶揄するつもりはまったくない。
(むしろ私も、サラリーマン時代にいろいろなことを勉強させてもらったからこそ
今日の自分がある。独立において、サラリーマンというプロセスは重要なものだ)

しかし、サラリーマンという生き方と、事業主という生き方の間には、
いやおうなしに大きな溝がある。

サラリーマンはどこまでいっても、やはり、事業は組織のものであり、
リスク(特に資金的なリスク)は組織が抱えてくれるものであり、
その関わり度合いは「メンドリ的」なのだ。

一方、事業主は、自分の事業に自分のすべてを賭して「ブタ的」に関わる。

両者の仕事に対する必死さ・緊迫感に違いが出るのは当然と言えば当然かもしれない。
それにしても事業主になってみて、
よく見えてくること、強くなれることがたくさんある。

私が従業員を雇う場合、
「大企業で働いてきました。これこれこういう実績があります」という人と、
「いったん独立しましたが、うまくいかずここで再起を図りたいです」という人と、
どちらに魅力を感じるか?―――いわずもがな、後者である。
自らの事業を自らのリスクで動かそうと試みた人間は、
他人には言いきれない多くのことを内に刻んでいる。

だが実際このとき、私は彼を従業員にはしないだろう。
事業主として彼を留まらせ、業務委託という形で彼に仕事を渡す。
彼とは労使の関係ではなく、協業パートナーとして結び付きたいからだ。
彼が事業主として仕事を再び軌道に乗せることができ、
今度は私にプロジェクトをもってきてくれるまでになったらとてもうれしい。

* * *

冗談半分に言わせてもらえば、
日本で45歳以上のサラリーマンを認めない法律をつくったらどうかと思う。
もしくは、40代での退職金が最も高くなるよう制度を直すべきかもしれない。
そして、20代30代にはもっと給料を出す。
加えて、高校生までは授業料を無料化する。
40代後半からは、皆が事業主になる社会をつくりだすのだ。

サラリーマンを卒業して、もちろん会社を立ち上げてもいいし、
個人自営業者・インディペンデント・コントラクター(独立請負業者)として
自らの得意とする能力を売ってもいい。
大きくやる必要はない。身の丈サイズの事業をとつとつと回していくのだ。

要は、組織の中で安穏とぶら下がりを考えるのでなくて、
自らの能力と意志でつくりだす商品・サービスを世間様に買っていただけるよう
全人的に仕事に取り組む職業人(=事業侍・ブタのコミットメント)に万人がなっていく社会だ。
そうした潔くたくましい大人が増えればこの国は壮健になる。

自分の事業を持つ。事業主になる。―――
これは誰しも人生に一度は経験すべきものだと声高に言いたい。

官僚の天下りがなくならない。
サラリーマンにしがみつく年寄りの保身姿は醜い。

いや、有能な人間ならそのポストに就いてもいっこうにかまわない。
就くのであれば、独立事業者として、コンサルタントにでも何にでもなって、
受託契約を1年1年きちんと市場価格で結んでいけばよい。

「メンドリの参加」程度で、割高年俸と退職金の二重取り三重取りは許されない。
潔く、社会良識をもった対価で、「豚のコミットをせよ」と言いたい。




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