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「仕事」の意味的広がり

1.2.1


「この伝票処理の仕事を明日までに片付けておいてほしい」
「営業という仕事の難しさはここにある」
「課長の仕事はストレスがたまって大変だ」
「彼が生涯にわたって成し遂げた仕事の数々は人びとの心を打つ」
「そんな仕事は、プロの仕事とはいえないよ」
「あの仕事ができるのは、日本に10人といないだろう」


私たちはこのように日ごろ職場で「仕事」という言葉をよく使う。仕事は短期・単発的にやるものから、長期・生涯をかけてやるものまで幅広い。また、その仕事をやるときの心の持ち具合もさまざまある。義務感からいたしかたなくやる仕事もあれば、内面から情熱が湧き上がってきて喜んでやる仕事もある。そうしたことをふまえて、仕事の平面的な広がりを示したものが下図である。

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明日までにやっておいてくれと言われた伝票処理の単発的な仕事は、言ってみれば「業務」であり、業務の中でも「作業」と呼んでいいものである。たいていの場合、伝票処理の作業には特別の動機はないので、図の中では左下に置かれることになる。

また、一般的に中長期にわたってやり続け、生計を立てるためから可能性や夢を実現するためまでの幅広い目的を持つ仕事を「職業」と呼ぶ。また、営業の仕事とか、広告制作の仕事、課長の仕事といった場合の仕事は、職業をより具体的に特定するもので、「職種」「職務」「職位」である。「生業・稼業」や「商売」は、その仕事に愛着や哀愁を漂わせた表現で、どちらかというと生活のためにという色合いが濃いものである。

さらに仕事の中でも、内面から湧き上がる情熱と中長期の努力によってなされるものは、「夢/志」や「ライフワーク」「使命」あるいは「道」と呼ばれるものだ。そして、その仕事の結果かたちづくられてくるものを「作品」とか「功績」という。「彼の偉大な仕事に感銘を受けた」という場合がそれだ。

◆「作業」としての仕事/「使命」としての仕事
この図の理解を深めるために『3人のレンガ積み』の話を取り上げよう。

中世ヨーロッパの町。とある建設現場に働く3人の男がいた。
彼らに「何をしているのか」と訊いた。
すると、1番めの男は「レンガを積んでいる」とつぶやいた。
2番めの男は「カネを稼いでいる」と答えた。
最後、3番めの男は顔を上げて明るくこう答えた───
「町の大聖堂をつくっているんだ!」と。



1番めの男は、永遠に仕事を「作業」として単調に繰り返す生き方である。2番めの男は、仕事を「稼業」としてとらえる。彼の頭の中にあるのはつねに「もっと割りのいい仕事はないか」だろう。そして3番めの男は、仕事を「使命」と感じてやっている。彼の働く意識は大聖堂建設のため、町のためという大目的に向いている。おそらく彼は、そのときたまたまレンガ積みという仕事に就いていただけなのかもしれない。彼はその後どんな仕事に就いたとしても、それが自分の思う大目的の下の仕事であれば、それを楽しむことのできる人間である。

3人の男はレンガを積むということで外見上は同じ仕事をやっているが、仕事に込める意識はまったく異なる。それを図で示すとこうなる。

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仕事を「作業」として冷めて割り切ってしまうと、仕事は生活の糧を稼ぐためにやらざるをえない労役になってしまう。しかし、「使命」としてとらえることができれば、仕事はさまざまな機会(チャンス)の固まりとなる。すなわち───

・生計を立てるための「収入機会」であるばかりでなく、
・自分の可能性を開いてくれる「成長機会」
・何かを成し遂げることによって味わう「感動機会」
・さまざまな人と出会える「触発機会」
・学校では教われないことを身につける「学習機会」
・社会に役立つ「貢献機会」
・あわよくば一攫千金を手にすることもある「財成機会」となる。


◆仕事のあり方はその人を表す

私たちは、初対面の人と交流するときに、「どんなお仕事をされているのですか?」と
よく質問する。この質問は、その人物を知るためには、とてもよいきっかけを与えてくれる。

なぜなら、仕事は多くの場合、

1)自分の能力
2)自分の興味・関心
3)自分の信ずる価値   を表明・表現する活動だからである。


月々日々、何十年とやっていく仕事を、単なる繰り返しの「作業」ととらえる人は、おそらく自分自身の能力、興味・関心、価値をさげすんでいる人である。また、仕事を生活維持のためだけの「稼業」ととらえる人も、自分の可能性に対して怠慢な人である。

仕事を、希望や夢、志、ラフワーク、道といったものにつなげている人は、幸せな人である。そうすることによってのみ、自分の能力は大きく開き、興味・関心は無尽蔵に湧き出し、自分の発した価値と共鳴してくれる人びとと出会えるからである。





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