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仕事とは 「IN→THRU→OUT」の価値創造である

1.2.2



◆価値の創造の3種類
前記事『「仕事」の意味的広がり(1.2.1)』では、仕事を平面的な広がりの中でとらえたが、今回は仕事を動的な変化でとらえる。仕事とは、どんな動的な行為をいうのだろうか。それを示したのが下図である。

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仕事とは要するに、自分が取りかかろうとするコトやモノに対し、当初の状態(Before)から、その後の状態(After)で、外形や内容を変え、価値を創造することである。その価値の創造には、図に示した通り3つのパターンがある。すなわち、

〈1〉 A→A± (その価値を増やす/減らす=増減)
〈2〉 A→B  (別のものにつくり変える=変形)
〈3〉 0→1  (新しく何かをつくり出す=創出)



どんな仕事もこれら3つの混合であり、仕事によってその割合が異なる。例えば、営業の仕事というのは、主に売上げを増大させることだから〈1〉型である。また、業務改善プロジェクトは〈2〉型の仕事である。研究開発の仕事は〈3〉型となる。

また働く個人によっても、〈1〉を強みとする人や、〈2〉が得意な人、〈3〉がまったく苦手な人、といったような違いが出る。


◆仕事とは「IN→THRU→OUT」の価値創造である
さて、その価値創造がなされるプロセスをもっと詳しくみていこう。ここでは、「INPUT/THROUGHPUT(以下THRUPUT)/OUTPUT」の3語を使って考える。

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図に示したように、仕事とは「何かをINPUT(投入)し、THRUPUT(処理・加工)し、何かをOUTPUT(産出)する価値創造である」と言える。

まず、私たちが自分の仕事を振り返るとき、それはさまざまなもののINPUTによってなされていることがわかるだろう。例えば私がこの記事を書くにあたって、他の人の著作や、他の人が整理した情報を吸収している。他の人の著作は、さらに言うと、誰かが編集・製本・刊行・販売してくれたもので間接的にそれらの人たちの知識や労働も取り込んでいることになる。

また、私はこうした自己啓発的な記事を書くにあたり、自分に啓発を与えてくれたさまざまな人間の精神エネルギーも受けている。さらには、世の中の流れを感受して、こんなような内容の記事が必要だろうと思って書いている。そして、当然ながら、こうした執筆仕事をするにはよく考え、よく動けるための健康な身体がいる。そのためによく食べる。食べるとはすなわち 動植物の生命を摂取するということだ。

このように私たちが行う仕事は、まずINPUTすることから始まる。何をINPUTするかといえば、知的な素材、精神的な素材、物的な素材である。それは例えば、

・他者が行った仕事(作品・サービス等)
・他者の想い
・環境(自然・世の中)からの啓示
・(生産のための)原材料
・動植物の生命       ……といったものである。

次に、こうしてINPUTしたものを私たちは、もろもろの能力、自らの価値観を基にした意志、そして身体を用いて処理し、新しい価値を生み出そうとする―――これがTHRUPUTの過程である。このTHRUPUTは個々それぞれが持つ、いわば価値創造回路のはたらきによるもので、仮にまったく同じものがINPUTされたとしても、人によってTHRUPUTとその後のOUTPUTは異なる。

そうした「能力×意志×身体」による固有の価値創造回路を経て、私たちはOUTPUTを行う。何をOUTPUTするかといえば、知的な成果、精神的な成果、物的な成果である。それは例えば、

・自分が行う仕事(作品・サービス等)
・自分の想い
・自分の人格
・自分の身体     ……といったものである。

OUTPUTするものは、目に見える具体的なものに留まらない。優れた芸術作品にはその作者の執念や美意識がいやおうなしに宿る。また一般的なビジネスパーソンでも、作成した企画書や報告文書の行間からはそのときの意気込みやら、あるいは逆に手抜き加減やらが滲み出てしまう。私たちは知らずのうちに自分の想いもOUTPUTしているのだ。さらにいえば、何十年という時間をかけ、私たちは仕事を通して自分自身という“人格”をもOUTPUTしているといえる。

このように仕事を「IN→THRU→OUT」の流れでみたとき、仕事を改めて定義するとすれば次のようになる。

仕事とは、
知的/精神的/物的な素材を取り込み〈INPUT〉
能力・意志・身体を用いて新しい価値を生み出し〈THRUPUT〉
知的/精神的/物的な成果としてかたちづくる〈OUTPUT〉
価値創造である。



さらにここで一点加えておけば、価値創造には「正」と「負」と2つの領域があることだ。「正の価値創造」は、善や真、美、徳に通じるもので、逆に、「負の価値創造」は、悪や偽、醜、不徳に通じる。人は誰しも正の価値創造をやるわけではない。負の価値創造をやる人もやはりたくさんいるのだ。



 *続く→1.2.3 『この世界は無数の「仕事」による壮大な織物である』


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