特集:08年「春の仕事キャンプin沖縄」雑記&フォト
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4月第1週、東京で満開の桜を堪能した後、
私は、08年の「春の仕事キャンプ」を沖縄・石垣島の地に張った。
せわしい東京を離れて、約1週間、
名勝・川平湾を望むウィークリーマンションの一室と
石垣の青い海と空・風が、私の仕事場となる。
「遊ぶように働く」「東京仕事と地方暮らしのハイブリッド・ライフ」・・・
その試みの一部を紹介する。
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Scene 1 石垣島の空気1
サラリーマンを始めて十数年が経っていた(1997か98年)ころ、
私が当時、一番楽しみにしていた趣味は、
キャンプや登山・トレッキングでした。
日ごろの仕事(=ON)の忙しさから解放されて、
OFFを楽しむことが、次の戦う鋭気を養うためには不可欠の生活をしていた。
アタマの中ではONとOFFを明確に切り替えたいはずなのに、
山の中を歩いているときとか、
キャンプで火を起こしているときなど、
なぜか、そのときに仕事のいいアイデアが浮かぶ。
そして、OFFを楽しんでいる最中、
そのいいアイデアを忘れないように、
何か紙の端切れにメモを残しておくことが何度もあった。
・・・そんな折、アウトドア雑誌『Be-Pal』を読んでいたら
同雑誌の編集部が、夏の間だけ、
八ヶ岳山麓に期間限定の出張オフィスを開設しているという記事を見つけた。
その誌面には、
「アウトドアを語る編集記者が、
夏の暑い最中に、東京のオフィスで冷房にあたっていて、
何のいい記事が書けるんだろう。だから我々は、自然の中に机を移します」
とか何とか、そういうようなことが書いてあったと記憶する。
「ははーん、そりゃ、そうだ」と私も思わず納得した。
と、同時に、そういうことを考えつく編集部の人間と、
それを許す会社をうらやましく思ったものです。
「じゃ、うちの会社でそれを説得してみよう」ということで、私は動いた。
当時、私はベネッセコーポレーションで、
大学生の就職支援事業をあれこれ担当していました。
詳細は割愛しますが、あれこれ意義を立て、業務ミッションをこしらえて、
1週間の小淵沢(山梨県)出張オフィスを実現させることができたのです。
あるリゾート開発会社と協業契約を結び、
その会社の持っているリゾートオフィスを貸してもらうことになった。
そのオフィスは、別荘地内に建つコテージタイプで
ネット回線のきている大きな仕事スペースに机・椅子、
そして会議テーブルとホワイトボード、
4つの個寝室と2つの大和室、キッチン&ダイニングがあり、
極めつけは、別荘地内にある天然温泉施設を24時間利用できることです。
そこに、私を含む社員2名、
大学生のインターンシップ数名を引き連れて、そこで仕事をした。
他の会社との応接商談はその期間中できないものの、
それ以外の仕事は、ほとんど支障なくできた。
ネットで通じていれば、情報から隔離されることもない。
メンバーは、仕事スペースで作業をしてもいいし、
眺めのいいベランダや外の庭に出て作業をしてもいい。
ともかく、この小淵沢での出張オフィスの一件は非常に有意義な仕事経験でした。
そしてこのとき、私は、
地方の環境のいいところで仕事をすることの気持ちよさを知りました。
そして、気持ちのよい仕事は、
仕事のONとOFFのたて分けをなくす感覚も知った。
仕事の需要は東京で確保し、
仕事の作業は、一部、地方でやることはできないか――――
そういうワークスタイルを意識し始めたのは、まさにこのときです。
今後IP回線網を利用したテレビ会議システムなどが普及すれば、
対面でやっているミーティングもPC画面上で可能になってくる。
そうなれば、ますます、地方と東京の物理的な障壁が低くなる。
そして5年前、サラリーマンを辞めて独立したのを機に、
自営業という時間の自由のききやすさを活かして、
いま、こうして「仕事キャンプ」と称して、地方で、ある期間、
仕事を集中的にやる習慣を身につけたわけです。
Scene 2 石垣島の空気2
2●【「仕事キャンプ」の意図】
私が東京を離れて、地方で(たいてい山か島にこもって)、年に数回、
仕事キャンプをやるにはいくつかの理由がある。
1)「考える」という基礎力を再活性させるため
2)「働いて生きていく」ということを立体的に観るため
3)自分自身がひとつの“働くモデル”としてその姿を提示するため
○
1番めの理由は、プロ野球の選手と同じです。
来るべき本番シーズンを控え、基礎的体力・技術を鍛えなおすことが
キャンプの目的です。
私は年間を通じて、だらだらと、あるいは間断なくせわしく惰性で
働きたくない。メリハリが大事だと思っている。
忙しさにかまけていると、人は考えること(=思索)をしなくなる。
考えるという基礎力を再び活性化させるために、静かな場所にこもる必要がある。
今後1年間の商売をどうしていくか(いきたいか)、
あるいは、中長期に
今後の仕事人生をどうしていくか(いきたいか)を考える。
もちろん、走りながら「考える」ことも必要です。
しかし、立ち止まって「考える」ことも同様に必要です。
2つの「考える」は、車の両輪であると思う。
どちらを欠いても、不完全となる。
○
2番めの、「働いて生きていく」ということを立体的にみるため
という理由も大きい。
私は滞在方法として、ウィークリーマンションのようなものを利用して、
できるだけ自炊生活しようと決めている。
(羽振りのいいリゾートホテルでリッチに原稿を書く
のようなことは志向していない)
地元のスーパー・商店にいって、食材を買い調理する。
とはいえ、もちろん外食もするし、観光もする。
ともかく、ある期間、「住む」ように滞在することで、
地元の経済とか、商売とかがみえてくる。
そこには、当然、その土地で働いて、稼ぎを立て、生きていく人たちがいる。
地方の経済は、本当に貧弱です。
その貧弱な経済の中でも、人びとはたくましくなんとか生きている。
根っからの地元の人たちも、
都会から移住してきた人たちも
ときに野暮ったくもみえるが、知恵を出して生きている。
そして、何か“豊か”です。
「ここで今、自分が永住するとすれば、どう働き、どう生きていくか?」
――――そういう自問は、いろいろなことを気づかせてくれる。
東京マネー、東京ビジネスのみの価値尺度では、
「働くこと・生きること」が平面的にしかみえなくなる。ときに、偏向的にも陥る。
しかし、地方での経済、暮らしを体感することで、
「働くこと・生きること」が立体的に歪みなくみえてくる。
○
地方で仕事キャンプを張る理由の3つめは、
自分がひとつの“働くモデル”を世に示すためでもあります。
私は、4つのサラリーマン経験と2つの大学院(うち1つは留学)経験を経て、
何の因果か、現在の“キャリアを語る商売”にたどり着いた。
キャリアを語るためには、
まず自らが「納得のいく」キャリアを体現していなくてはならない。
そして、働くを楽しんでいなくてはならない。
さもありなんというキャリア論を教壇で教えるよりも、
自らの姿で「職・仕事とは何か?」「キャリアを拓くとは何か?」を
指し示すほうが、説得力がある。
そして何よりも、そうやって新しいワークスタイルを試すことで、
自分が一番の学習者になれる。
そして、そこで得たことを、知恵として語る。
その知恵こそ、他者への最良の教育コンテンツとなるはずです。
そして、それで多少のお金がいただけるなら、こんな有難いことはない。
「キャリアとは何か?」といった人生問題には唯一無二の正解はない。
だから、世の中には、多様な「ロールモデル」が必要となる。
そのモデルのひとつに自分は進んでなりたいと思う。
私も、かれこれ、齢も40半ばを超えてきた。
世間でいえば、れっきとした“おじさん”です。
おじさんの世の中での役割は、
後継世代に「よい背中をみせる」ことではなかろうか。
よい背中かどうかはわからないが、
少なくとも、若い世代に何かしらを考えさせる背中を示したいとは思う。
ただ、戒めたいのは、そのモデル示しが、
いたずらに自己顕示・自己満足のものにならないこと。
このブログは、自慢話をひけらかす閉じた目的ではなく、
世の中に何らかを提案する開いた意識の下に情報を発信していきたい。
多少、見せ方の演出はするにせよ、
あくまで、坦々と、しかし、深くじっくり「働く」を思索する種を届けたい。
Scene 3 キャンプ模様1
3●【08年沖縄キャンプ雑感】
<石垣島という選択>
仕事キャンプを張るには、ネット回線のきている部屋が必要です。
ホテルや旅館は気分的・機能的・コスト的に合わない面が多い。
(小説家が常駐宿で豪勢に執筆活動をすることにはあこがれもしますが)
日単位・週単位で借りられるマンションは好都合です。
沖縄にはそんな物件が多い。
那覇市内というのが多くて、どうも味気ない。
本島は物件が豊富だが、
石垣島は穴場です。
もともとダイビング客向けに、安価で滞在日数の多い宿の供給が豊富な所であり、
加えて、昨今の移住ブームで、賃貸マンションが増えた。
私が選んだのも、昨年建設されたワンルームマンションです。
名勝・川平湾まで徒歩5分、
ベランダからその青さを望むことができる。
寝具、調理器具、食器、洗濯機など滞在生活に必要なものは揃っている。
ワンルームタイプだが、都心のワンルームより広く天井も高い。
賃貸料は、1週間で21,000円。
(あと、往復航空券+レンタカーのパック料金が48,000円)
これを安いとみるか、高いとみるか。
私は、この額面以上のもの、そして額面では計れないものを得ようと
乗り込んでいるので、何ともない。
要は、そのコストをどう活かすかという意志の問題だと思う。
ちなみに、
石垣島と沖縄本島の比較で言えば、
石垣島の賃貸料は本島より安い。しかし、東京往復の航空券料金が割高になる。
沖縄本島は、航空券が割安になる分、賃貸料が割高になる。
トータルで費用が同じなら、「環境のよい離島を選ぼう」それが私の選択。
沖縄通になればなるほど、
那覇市は都会であり、 本島の自然環境は離島のそれに比べて見劣りすると感じる。 石垣島も、エリアによって環境差がある。 賃貸マンションが多いのは、中心地の石垣タウンだが、 旅客機の離着陸はあるし、車や観光客も多く、どことなくせわしい。 島の北部、中心地から車で20~30分ほどの川平(かびら)地区。 観光スポットである川平湾は、昼間こそ観光客でにぎわうが、 集落自体はこぢんまりとして静かであり、 海とともに山の緑も豊富です。 そこではいかにも沖縄の白浜といった景色を存分に楽しめる。 4月初旬の気候は、 浜辺の木陰で読書するには最高の温度・湿度です。 午後5時以降に開いている飲食店もわずかしかない。 自炊であれば、中心地できちんと買い込んでおかねばならない。 短期間の滞在であれば、この程度の隔離具合はむしろ心地よい。 ○ まず、朝夕の散歩。 これが楽しいし、収穫も多い。 詳細は、ブログのカテゴリー「私のハイブリッドライフへの試み」中に書いた。 主にやることは、 ・刊行予定である著作の執筆 ・既存に動かしている教育サービスのプログラム改善 この2つのことをやるために、 日ごろ書き付けておいたアイデア帳を振り返ってみたり、 新聞スクラップを整理してみたり、 既読本の重要箇所コピーのファイルを読み返してみたりする。 (そうした資料は、事前に宅急便で送っておく) 他にやりたいこと、次にやりたいことが脇道から湧いてくる。 一方で現行の仕事が片付いている分、 他方で未来の仕事が散らかっている状態になる。 思考が深まるほど、次の行動したいという欲求が高まるのは 当然のことだと思う。 (私は沖縄まで、観念の遊戯に来ているわけではない) 考えれば考えるほど、エネルギーが内から湧いてくる。 キャンプ中、特段、時間割を決めるわけではない。 日が昇れば、ベッドから起き上がり、 そろそろ寝るころだなと思えば、寝る。 自分で作るもよし、ふらり外食に出るもよし。 考えごとをしたければ、ぼーっと休む。 部屋がよければ部屋で作業をする。 浜辺がよければ、浜に出て行く。 人恋しくなれば、観光スポットに行って賑やかさをもらってくる。 土産雑貨ハンティングも楽しむ。 テレビは、ニュース以外、ほとんどみない。 音楽は、気が向けばPCのハードディスクの中にある音楽か、 インターネットラジオから適当に選んで流している。 メールも緊急ものでないかぎり、返信はしない。 アタマは力強く、鋭利に回転している。 真の「スローライフ」は、快活と献身によるものです。 そこには、必ず自分なりの強い信条・意志がある。 誰もがそうできるわけではないし、 誰もがそう志向する必要もないのですが、 私は、「仕事と生活」、あるいは「仕事と遊び」、 そして「東京仕事と地方暮らし」など、 本来、2項分離するものを、相互に融合させた働き様・生き様を目指しています。 (それを「ハイブリッド・ライフ」と呼んでいる) 1週間の仮住まいでは、まだまだ不十分だらけではあるが、 一歩ずつ、一つずつ「試すこと」が大事だと思う。 状況に合わせて考えなおし、また、試す。 そうすると、次の新しい景色がみえてくる。 そして、さらに試す・・・・。 「生きるを拓くこと」にほかならない。 「どうしたら夢がみつかりますか?」とか 「自分のやりたい目標が描けないんですが・・・」と いったような質問をよく受ける。 夢や志、将来の目標など見つけられるものではない。 試してみて、試してみて、試してみて、 状況に応じて、修正をして、また、試してみて、 試してみて・・・・ 天職・ライフワークのようなものがみえてきているハズです。 だから、試さない人は、いつまでたっても、 自分の行き先はみえない。 「描こうとするものを知るには、描き始めねばならない」。 体現するために、まず、小さな「自分試し」から始めています。 *石垣島での「仕事キャンプ」中に書いた日記文は、本ブログトップページの ・アーカイブ:2008年4月 ・カテゴリー:「私のハイブリッドライフへの試み」 に収録されています。
<川平地区のこと>
私が選んだのは、
近くには底地(すくじ)ビーチがあり、
ただし、この地区には食材スーパーはない。
<仕事キャンプで何をやったか>
○
集中的に深掘りすることで1週間はあっという間に過ぎる。
深掘りして考えれば考えるほど、
だから、キャンプを終えるときには、
しかし、思考とは本来、行動のためのものであり、
いずれにしても、このキャンプは考えても考えても消耗しない。
○
腹が減れば食事を摂る。
原稿の筆を走らせたければ、ノートPCに向かって文章を打ち込む。
昼寝をしたければ、昼寝をする。
時計はみない。
ゆるゆる、気まま、だが、
「スローライフ」というが、怠惰・放棄をしてスローライフというのではない。
Scene 4 キャンプ模様2
4●【「ハイブリッド・ライフ」に向けて】
東京で仕事を保ちつつ、沖縄(島)で暮らすことができるのか、
試した後に、新しい景色が開け、
この繰り返しこそ、「働くを拓くこと」であり、
キャリア形成について研修を行っている職業柄、
誰しも、一気に、簡単に、
少しずつ、自分の小さなやりたいことを試してみて、
ようやく、ある時点で気づくと、自分の夢やら志やら、
私が原稿でよく引用するパブロ・ピカソの言葉:
私自身も、自ら掲げる「ハイブリッド・ライフ~遊ぶように働く」を