ヒトを全人的に育てる思想
【沖縄・石垣島発】
◆ホンダの人財育成思想:OCT
あるとき、ホンダのマネジャークラスの方にお会いして
“OCT”なる言葉を聞きました。
――――「OCT(オン・ザ・チャンス・トレーニング)」
「人は育てられるのではない、自ら育つ」というスタンスに立ち、
会社側はそのための環境とプロセスを整えること、
これがホンダの人財育成の根本思想だというのです。
確かに、ホンダの歴史をみても、
例えば、1959年(創業11年め)、伝説の「マン島TTレース」参戦では
メカニックもライダーも全員20代。
人選も「やりたいやつは手をあげろ!」「はいっ!」で決まったといいますし、
同じく、59年、やはり30代の一人の課長(白井孝夫氏)に
鈴鹿工場建設のすべてを、
本田と藤澤の経営側は一任しました。
白井課長は、その勉強のために
「おまえ、しばらくヨーロッパに行って来い」と言われたそうです。
それと同時に、ホンダの有名な文化として、
『三現主義』:
・現場に行け
・現物、現状を知れ
・現実的であれ
『自己申告主義』:
研究や開発は、アイデアを出した人がそのテーマの責任者となる
いわゆる“言い出しっぺ”がリーダー
こうしたことがベースになって、
「チャンスの中でヒトは勝手にしぶとく育っていく」というホンダのOCTが
組織の中に、人財育成“思想”として根を張っているのだと思います。
これは思想であって、
人財育成戦略とか、戦術とか、施策などという
何か仰々しく、カッコつけて実行しているものではなく、
組織体に染み込んだDNAレベルのもののように感じます。
その大本である本田宗一郎さんも、
・「創意発明は天来の奇想によるものではなく、
せっぱつまった、苦しまぎれの知恵である」
(だから、人を2階に上げておいて、はしごをはずせば、いい知恵がわく)
・「見たり聞いたり試したりの中で、試したりが一番大事なんだ」
・「やりもせんに」
(やりもしないで、机上の知識でものの可否を断ずるな)
など、いろいろな語録を残しています。
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◆全人的・全体的に仕事を動かせるヒトが激減している
私は新卒で最初、文具・オフィス用品メーカーに入り、商品開発を担当しました。
入社時からいきなり担当商品を割り当てられ、
プロダクトマネジャーとして、
アイデア出し・企画から試作品、デザイン、製造、流通、
広報・広告、アフターサービスまで、
それぞれの工程の専門スタッフをチーム化して、夢中(霧中)で働きました。
この会社・この部署には3年弱在職しまして、いくつかの商品を
世に送り出したわけですが、結果的に、ここでの経験が、
その後の私の全てを育ててくれたといっても過言ではありません。
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ちなみに当時の私の直接の上司(部長)は、
アスクル株式会社を立ち上げられた岩田彰一郎社長です。
プラス株式会社の今泉公二副社長とともに、このお二人は、
まさに私にとっての本田宗一郎的存在でした。
私の場合、職業人として何年も経ってから、
ようやく、やれP/L・B/Sだとか、やれマーケティングだとか、
あるいはSWOTだの5 Forcesだの戦略論の勉強をやりましたが、
学んだ当初、どうも、現実味の迫力に乏しく、
ひとつひとつの知識が「ギスギスとやせて」いて
腹ごたえがないように思えました。
(アタマをシャープに体系的に整理し直すという意味では、
とても有益・有意義だと思っていますが)
他方、
ひとつの完結するプロジェクトなり、大きな仕事単位を
どっさり任されることは、
全人的に、全体的に取り組まねばならない奮闘であって、
それは格好の
体験、学習、コミュニケーション、修羅場、歓喜の機会を与えてくれます。
その意味で、実に「ふくよかな」なのです。
現在、世の中のさまざまな研修教育プログラムは、
細分化の流れにあります。
これは、現在のビジネスがどんどん細分化(分業化)・煩雑化し
専門能力が欠かせないことに呼応しています。
だから、会社側も、テーマが細分化されたスキル習得研修や
専門知識の植え付けセミナーに多くの従業員を行かせます。
現在の組織内のヒトの問題のひとつを挙げれば、
ヒトがいやおうなしにどんどん「知識でっかち」
あるいは「技能でっかち」になっている中、
全人的・全体的に仕事を動かせるヒトが激減していることです。
すでに多くのミドル管理職でそれができなくなっているとすれば、
上下方向に支障をきたします。つまり、
若手に対する現場のOJTの内容は乏しいものになるでしょうし、
近い将来の上級マネジメントの人財供給にも難が出てきます。
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◆全体論的な視点からの人財育成
還元論(あるいは機械論)と全体論というのが、科学の概念であります。
還元論は、物事を基本的な1単位まで細かく分けていって
それを分析し、物事をとらえるやりかたです。
人間を含め、自然界のものはすべて、
部分の組み合わせから、全体ができあがっているとみます。
西洋医学は基本的にこのアプローチで発展してきました。
胃や腸などの臓器を徹底的に分析することで、
さまざまな治療法を開発するわけです。
他方、胃や腸など臓器や細胞をどれだけ巧妙に組み合わせても、
一人の人間はつくれない、
全体はそれ一つとして、意味のある単位としてとらえるべきだ
というのが全体論です。
東洋医学が主にこのアプローチです。
この両方は、どちらかが良い悪いではなく、
要は、バランスが大事です。
どうも、私には、技能研修や知識研修は、還元論アプローチにみえます。
一方、ホンダの『OCT』は、全体論アプローチにみえます。
医療の世界では、東洋医学への見直しが高まっているように、
(ガンと共生する考え方や、漢方薬、ヨガなど)
人財育成も、全体論的な角度からの見直しが必要だと思います。
それは小難しいことではなく、
どんとチャンスをどんと与えることではないでしょうか。
本田宗一郎は、「やりもせんに」といいました。
サントリーの鳥井信治郎は、「やってみなはれ」
ナイキのCFコピーは、「Just Do It !」。
私も、キャリア教育、働く自律マインド醸成教育において、
全体論的なアプローチをしようと考えています。
その詳細に関しては、順次、このブログで触れていくつもりです。
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<08年 沖縄キャンプ終了>
4月2日から石垣島で行ってきた仕事の春キャンプも今日が最終日です。
海を眺めながらの集中的な思索作業、執筆作業、再構築作業を終えて、
また東京に戻り、
研修の実施やら、関係者とのミーティングやら、普段どおりの仕事を再開します。
沖縄キャンプの期間中に撮った写真を間近にアップするつもりです。