これからの大事な人財要件1<コンセプト創造性>
【信州・蓼科発】
初夏の仕事キャンプ4日目。
蓼科地方は昨日の午後から雨。きょうもたっぷり降りました。
観光であれば恨めしい雨なんですが、
私の場合、部屋の中で雨音を聞きながらの執筆仕事もまたいいものです。
新緑も5月の慈雨を受けて、つやつやしています。
そして、仕事合間に露天温泉に浸かりに行く。
仕事は天候にかかわらず順調です。
*部屋の窓からは緑がまぶしい。今日は奥蓼科温泉に:「渋辰野館」の湯はいいです!
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さて、本日の話題。
きょうから3回シリーズで、これからの時代の働き手に求められる大事な要素について書いていきます。
組織人事の分野では、「人財要件」(あるいは「人財スペック」)という語がよく使われます。
人財の採用・登用にあたって、どんな要件を満たすことを求めるか、ということです。
この人財要件とは、主に、能力・資質面のことを考えるわけですが、
近年はその分類がどんどん細分化しています。
例えば技術系の職種であれば、どんな種類の技術的技能・資格・知識を、
どのレベルまで有しているか、
管理職であれば、PL/BSは読めるか、
コミュニケーション能力、リーダーシップ能力はどの程度か、
また職能等級を1段階上げるには、どの能力をどの程度まで上げる必要があるか、
など、ともかく人事担当者は細かなマトリックス表をつくって
人財の要件管理を行なうわけです。
これはこれでなくせないものであると思いますが、
ただ、この流れのみで人財をとらえていくと、見失うものがあると私は感じています。
◆要件を細分化するだけではみえてこないもの
人財を見つめるにあたって、
もっと大きなゆるいくくりで
大元のところの要件を考える必要があるのではないかと思います。
そこで、私が考えるこれからの時代の大事な人財要件を3つ述べます。
これは私が日ごろ企業研修を行なって、
今の働き手(一般従業員、管理職、経営者のすべてを含む)の中で
脆弱化しているなと感じるものでもあります。
その大事な人財要件3つを先に紹介すると
1)「コンセプト創造」性
2)「賢慮・美徳」性
3)「自律した強い個」のマインド
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=要件1【コンセプト創造性】=
◆モノづくりの真面目さだけではダメな時代
この「コンセプト」という語は「概念」という訳語では狭くてしっくりこないので
そのまま英単語を用います。
ともかく、日本人はこの「コンセプト」の創造が下手な民族かもしれません。
乱暴な言い方を許していただければ、
日本人は古来より「モノづくりの民」です。
民族のコンピテンシーは繊細で器用な手先にある。
一方、アングロサクソン人は「コンセプトづくりの民」かもしれません。
新しい概念をつくって、仕組み化する、
そしてその胴元になって自らを潤すことに長けている。
日本人は一生懸命、「優秀なゲームプレイヤー」になろうとするが、
アングロサクソン人は、努めて、
「ゲームプロデューサー/オーナー」になろうとする。
これからの時代は、情報化社会から一歩進んで「コンセプチュアル社会」に移る。
また、「ハード/ソフトづくり」を超えて、
「コンテクスト(文脈)づくり」をうまく成し遂げた者が
優位に立つビジネス世界となる。
そんな状況にあって、
個々の働き手に求められる人財要件のひとつは「コンセプト創造性」です。
自分が携わる分野の商品・サービスにおいて
・新しい概念を顧客に提案し
・それをビジネスモデルとして仕組み化し
・その仕組みや枠組みを他との競争の中で常に再構築していくこと
日々の業務で言えば、
・常に「サムシング・ニュー」を仕事に付加すること
(=同じパターンの繰り返し業務で安穏としない)
・常に未来に仮説を抱き、そこに道筋をつけようと行動する
(=過去の成功分析、後学問で仕事・事業がわかったような気にならない)
・人が普通考えないような角度でものを考える
・新しいキーワードをつくって人々を引き寄せる
・自分が担当業務の場からいなくなっても、業務が回るような仕組みを考える
・自分のアイデアを他者に発信する習慣を持つ
(他者からのフィードバックを得たら、その後、修正アイデアを再発信する)
・新しいことを面白がる
などなど、さまざまあるでしょう。
ダニエル・ピンク氏が著した
『ハイ・コンセプト~「新しいこと」を考え出す人の時代』
(大前研一訳、三笠書房、2005年)は、まさにこれらのことを指摘した意欲作でした。
◆「答えのない時代」にどんなヒトが求められるのか?
ピンク氏は、
「これからは、創意や共感、
そして総括的展望を持つことによって社会が築かれる時代、
すなわち『コンセプトの時代』になる。
・・・・・・
『ハイ・コンセプト』とは、パターンやチャンスを見出す能力、
芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、
人を納得させる話のできる能力、
一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力、
などだ。
・・・・
個人、家族、組織を問わず、
仕事上の成功においてもプライベートの充足においても、
まったく『新しい全体思考』が必要とされている」
と書いています。
この本の訳者である大前研一氏は、まえがきで次のように補足しています。
「要するに、これからは創造性があり、反復性がないこと、
つまりイノベーションとか、クリエイティブ、プロデュース、
といったキーワードに代表される能力が必要になっていくということである。
・・・・
『答えのない時代』のいま、世の中に出たら、知識を持っているよりも
多くの人の意見を聞いて自分の考えをまとめる能力、
あるいは壁にぶつかったら、
それを突破するアイデアと勇気を持った人のほうが貴重なのである」と。
パソコンOS、インターネット、ネット通販、検索エンジン、Web2.0・・・
アメリカの国力は、こうした新しいコンセプトを次々に生み出し、
それを具現化し続けるところで維持されています。
一方、生真面目なモノづくりのみをコンピテンシーとする我が国は、
すでに黄色信号です。
(国レベルだけの話ではなく、個々の会社、個々の働き手においても)
日本民族は概して、コンセプト創造を得意としません。
しかし、まったくその能力がないかといわれれば、否です。
◆ニッポン人だって、すごいコンセプトを生み出してきた
商品先物取引というコンセプトは、大阪のコメ市場が世界の発端であるいいます。
千利休は類稀なるコンセプト創造者でした。
茶道というコンセプトを打ちたて、今日に続く美の様式を打ち立てました。
いわずもがな、ソニーは「音楽を持ち歩く」というコンセプトを
「ウォークマン」というハードに具現化させ、
現代人のライフスタイルをつくりました。
(ただ、その後、アップルにお株を奪われてしまっていますが・・・
それも、その後のコンセプト展開を怠けたということでしょうか)
また、任天堂の「Wii」の成功は、
家庭用ゲーム機のコンセプトを再構築したことにあります。
(かつての「ファミコン」は借り物のコンセプトの上の製品でした)
日本は、もはや「優れたモノづくり力」×「追従・模倣力」で
やっていく国ではなくなっている。
これからは、「優れたモノづくり力」×「コンセプト創造力」でやっていくしかない。
しかし、それが掛け合わさったとき、ものすごい力が出せると思います。
さて、次回は、冒頭にあげた3つの人財要件のうち、
残りの2つ、「賢慮・美徳」「自律した強い個」について書くことにします。
一角を仕事テーブルとして使わ
せていただく
なお、信州キャンプの模様は間近に特集記事としてアップの予定です。