上司をマネジメントする〈4〉~上司の発言を「ろ過」する
(伊豆・修善寺にて1)
◆あの人の話は正論だが聞き入れたくないという心情
私たちは他人の発言に対し、
「あいつの言っていることは正論だが、あの言い方が気に入らない(だから受け入れない)」とか、
「よりによってあんな人間からそれを言われたくない(だから無視してしまえ)」など
の反応を起こすときがあります。
人は往々にして、好意を持っている人の発言はまるまる聞き入れやすいのですが、
多少なりとも嫌悪感を持っている人や、まったく見ず知らずの人の発言に対しては、
たとえ言っていることが正しいと思われても、その「言い方」や
「誰が(目上か目下か、男か女か、どんな社会的立場の人間か、風貌はどうかなど)言ったか」を
問題にしてしまい、素直にそれを受け入れることができない場合があります。
◆心にフィルターを入れよう
単なる世間づきあいの関係であれば、他人の発言は受け流すこともできますが、
これが上司/部下の関係ともなると話が違ってきます。
部下にとって上司の発言や命令は、ほぼ全面的に受け入れなければならないものです。
上司との相性がよく、良好な関係下であれば問題はないのですが、
もし、自分が上司と反りが合っていない、
もしくは上司に対して違和感や嫌悪感、不信感を抱いている場合には、
上司の発言や命令がいちいち気に障るというストレスが生じます。
上司の発言や命令が皮肉交じりであったり、慇懃無礼であったりし、
なおかつ正論であればあるほど、部下にとっては受け入れがたいストレスとなります。
そんなとき、心の中に「フィルター」を入れましょう。
「誰が」「どういうふうに」言ったかを除去し、
「何を」言ったかだけを濾過するフィルターを自分の中に組み込むのです。
「何を」言われたかだけを淡々と受け入れ、淡々と処理し、行動する。
ただ、それだけです。
◆上司の発言・命令を3つに濾過する
このことを下の図を使っておさらいしましょう。
上司の発言・命令は、3つの構成要素から成っています。
それを優先順位の高いものから並べてみます。
〈1〉「何を」言ったか・・・「内容」の要素
〈2〉「誰が」言ったか・・・「発信者」の要素
〈3〉「どう」言ったか・・・「態度・方法」の要素
上司から何か発信があったとき、部下である私たちはまずそれを受信します。
そして意識的にフィルターを設けて、その発信を三つの要素に濾過して分離します。
まず上司が 「どう」言ったか について。
もし上司が嫌ったらしく言ったとか、冷たく言ったなどであれば、
それはフィルターでろ過して取り除いてしまい受容しないようにします。
次に、 「誰が」言ったか は、
課長の発言か社長の発言かで重要度は異なってきますから、
ケースバイケースで受容を決めます。
そして 「何を」言ったか については、これはもっとも重要な事項ですので、
これを純粋に聞き入れ、評価した上で、それに合わせて行動します。
悪い部下の例は、自分も感情的になって、
上司の発言のすべてをシャットアウトしてしまうことです。
組織で働く人間である以上、部下は上司の発言・指示の「何を」の部分だけは
(最終的にそれに従うかどうかは別にして)受け付けをしなければなりません。
ですからシャットアウトではなく、フィルタリングを心がけてください。
上司の発言をフィルターにかける―――
実践はそう簡単ではありませんが、
このことで、上司ストレスはかなり減じるはずです。
自分を守るために、感情の襞(ひだ)に上司の毒気を触れさせぬことです。
*本シリーズ記事の詳細議論は、拙著『上司をマネジメント』を参照ください。
(伊豆・修善寺にて2)