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2010年5月21日 (金)

上司をマネジメントする〈6〉~「聞き上手」は3つの力

Ryomazo1r
高知県・桂浜にて
不思議なもので、ここから望む太平洋には血を騒ぎ立たせる何かがあるように思える



◆上司の中にヒントを聞く ~「観察力」「読解力」「設問力」
部下にとって、上司とのコミュニケーションは「聞くこと」が基本です。
十分に「聞く」ことなしに、事を早急に片付けようと、
上司を説き伏せようとか、考えを改めさせてやろうなどと挑んではいけません。
結果的に遠回りになったり、事がねじれたりすることが往々にして起こりえます。

上司のことをよく「聞く」ことで、その言動や素振り・習慣の中に
最適方法や近道、説得へのヒントが見えてきます。
部下は「聞き上手」でなくてはならないのです。

さて、私がここで使っている「聞く」ということは、非常に広い意味で使っています。
上司の傾向性を「察する」、上司の仕事のクセを「観る」、上司の判断を「推測する」など、
五感六感をフルにはたらかせて、上司を「感じ取る」ことを言っています。
上司マネジメントにおいて、聞き上手であるためには、
次の三つの力が重要です。それはつまり、

 ・「観察力」
 ・「読解力」
 ・「設問力」  
 です。


◆観察力を磨いて上司に「チューニング」する
部下は、上司の仕事スタイルや行動特性・志向性などがどういう特徴をもっているのか、
それを日ごろから観察して、把握しておく必要があります。
これは、部下が上司にいわば「チューニング」を施すために重要なことです。

上司へのチューニングがずれていると、
簡単に承認されるはずの案件もされずじまいに終わったり、
いい企画案も差し戻しを受けたり、
コミュニケーションで誤解を生じさせてしまうことが多くなったりします。
上司は無意識ですが、自分の波長に合うスタイル・方法で接してこられることを
要求しているのです。
そのために、部下は「観察力」を磨かねばなりません。

 ・上司の状態のいいとき・悪いときのしぐさを探る
 ・上司の強み・弱みを察する
 ・どんな仕事スタイルを好むか
  (データ重視か、感覚・ひらめき重視か、政治力重視かなど)
 ・どんなコミュニケーションスタイルを好むか
  (文書派か、口頭派かなど)
 ・どんなワークスタイルを好むか
  (研究調査系か、体育会系か)
 ・上司の価値観、仕事美学・人生美学、ポリシーを聞き出す
 ・部下が何をすれば喜ぶか、頼もしく思うかを常に考える
 ・上司はどんな行動に対して嫌悪感を抱くかを感じ取る
 ・上司という人間を複眼で観る
  (部下の眼、上司の上司の眼、友人の眼、親の眼など立場を変えて観る)

これら観察を行うのは、上司に媚びたり、妥協をするためのものではありません。
上司の波長に近い形でコミュニケーションを行うことで、
自分をより受け入れてもらいやすくするためのものなのです。


◆読解力は上司のあいまいな点と点をつなぐこと
上司の発言や行動の中には、いろいろな信号やヒントが隠れています。
上司と真っ向から対立して、自分の意見を押し通すというのは、
譲れない一大事のときは別にして、できるだけ避けたいものです。

したがって、日ごろ多くの業務の中では、
上司のベクトル(意思の力と方向)を利用しながら、
自分の思うベクトルに近づける形で着地するほうが現実策です。
そのために、上司を「読み解く」力が求められます。
これも上司へのチューニングのひとつですが、先の観察に比べ、
もう一歩踏み込んで神経と頭を使わなければなりません。具体的には、

 ・上司の発言の中に説得点・着地点を見出す
 ・上司の命令の行間を読む
 ・上司の判断を推測する
 ・上司の行動を先回りして考える

上司とて管理・監督の神様ではありません。
自分の担当事業について、どんな選択がありうるのか、
またどの選択肢が正解値なのかが明確にわかっていないときも多いのです。

部下の前で話したり、命令したりするときも、
実は自分でもあいまいなまま口に出していることがあります。
そんなときの上司の心境はどうかといえば、
「俺はこの方向で何とかいきたいと思っている。が、まだ確信はない。
この意をくみとって、部下たちから何か妙案が出てくればいいのだが……」です。

上司という生き物は勝手なもので、自分はおぼろげながらでも「点」を言えばいい、
その後、その点をクリアにして、「線」でつないで持ってくるのが
部下の仕事だと思っています。
そして実際、上司から信頼を受ける有能な部下とは、それをこなす人なのです。


◆設問力で上司と本質を共有する
聞くことにおいて、もっとも難しいのが「問いを立てる」ということです。
ここでいう「問い」とは漫然と質問をすることや、
日常業務の作業について事細かに指示を仰ぐ、確認するということではありません。

現在進行している担当事業について、自分なりの観察や読解を経て、
なんらかの仮説を立て、結論を固めるために、その本質を問うという行為をいいます。
具体的には例えば、

 ・その事業、そのプロジェクト、そのアクションの目的を問いなおす
 ・WHY(なぜそうなのか)を共有する
 ・優先順位を確認する
 ・リスクを洗い出す
 ・方法論、手段の選択肢を提案する

などのようなことを行うことです。上司とのやりとりの際には、

 ・「目的や意義を自分ではこうとらえていますが、部長はいかがお考えでしょうか」
 ・「リスクを洗い出してみましたが、他に重大なモレはないでしょうか」
 ・「この方法はコストが問題になりますが、部長の知恵をお借りできませんでしょうか」

というふうに、必ず自分で考えた土台案を基に問いかけをすることです。
手ぶらで訪れて、漫然と聞いてはだめです。

その問いが本質に近いものであればあるほど、上司はどきっとさせられるでしょうし、
「なかなかこいつは、深いところまで考えているな」と
あなたへの評価を新たにするでしょう。
また、あいまいだった上司自身の腹をその質問で固めることができれば、
組織全体にも好影響となります。

……こう書いてくると、
「何をそこまで部下が大人にやらねばならないのだ。
上司は高い給料をもらっているではないか(怒)」と思ってはいけません。

上司は欠点だらけ(そしてあなたも欠点だらけ)です。
しかし、上司は貴重な「資源」なのです。資源に怒ってもしょうがありません。
むしろ、その資源を活かすことにアタマとエネルギーを使ってください。
そのために、聞き上手になることです。できる部下は、「柔よく剛を制す」の精神です。

Ryomazo2r
―――「生きるも死ぬも、物の一表現にすぎぬ。
いちいちかかずらわっておれるものか。
人間、事を成すか成さぬかだけを考えておればよいとおれは思うようになった」。
                           (司馬遼太郎『竜馬がゆく』より)


 

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