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2010年5月23日 (日)

「人財」と書きますか? 「人材」と書きますか?



Two jinzai
 



最近、名刺交換をすると、 「人財開発部」 とか 「人財育成担当」 とか、
“人材” という表記ではなくて、
“人財” という漢字を当てる会社が増えてきたように思う。
これは、それだけヒトが重要だと認識する組織が増えてきた流れであるのだろう。

私たちの家の中には、火事などで消失してしまいたくない物がたくさんある。
成長と共に使い慣れてきた箪笥、思い出の詰まった写真アルバム、
海外で買ってきたお気に入りの食器、プレゼントでもらった置時計、
新品のスーツ、最新機種の大型液晶テレビ、データを蓄積したパソコン……
これらはみんな「家財」である。
財(たから)の価値がある。

同様に、組織で働くヒトは、大事な「財」である。
だから「人財」と書きたい。
「人財」という表記は、ヒトを大切に思いたいという意思表明なのだ。


何年か前に、あるビジネス雑誌の企画で人事担当者の座談会をやったことがある。
(私は司会者をやらせていただいた)
出席者の一人として日本では有数の大手企業の人事部長が来られていた。

私は、各出席者が人事に関わる人間として
「人材と人財の違い」についてどうとらえているかを訊いてみた。

すると、その人事部長は、
「いやー、そんなことは考えたこともなかったなぁ」と前置きし、
少し考えながら、
「みんな若いうちはどんな能力があるかわからないわけだから、
その後何に化けるかわからないという意味で “材” なんだと思う。
だけど、いつまでも “材” でいられると困るんだけど」―――というようなコメントをされた。

確かに、本来的には「人材」とは、そういう意味合いを含んでいるのだろう。
(材には「才」=能力の意味があると漢字辞典に記載があった)
それはそれで納得のいく返答だったが、
私は、その人事部長がどこかヒトに無頓着な様子がして、それがとても気になった。


これは英語表記でも同じことが言える。
日本でも一般化している「HR」とは “Human Resource” のことだ。
これは、ヒトを “資源” とみている。

このとらえ方の下では、ヒトは使い減ったり、
適性がよくなかったりすれば取り替えればよいという発想になる。
そして経営者は、多様なヒト資源をどう組み合わせて、
いかに最大の成果を出すかをひたすら考える。
ヒトは「材」という考え方に近い。

その一方で、 “Human Capital” という表記も増えてきた。
これは、ヒトを “資本” とみる。

この場合、ヒトは長期にわたって価値を生み出すものであり、
生産のための貴重な元手ととらえる。
したがって、経営者は一人一人に能力をつけさせ、
そのリターンをさまざまに期待する発想をする。
すなわち、「人財」の考え方だ。

ヒトを大切に考えるかどうかは、
実はこうした些細な表記文字によって推しはかることができる。



 

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