意志の結晶としての「鉄人28号」
神戸への出張に合わせて、是非見ておきたかったのが「鉄人28号」。
JR新長田駅を降りて若松公園に向かうとそれはあった。
報道写真で見ていたとおり、その巨大モニュメントの完成度は実際なかなかのもので、
あぁ、これなら町の自慢として、想いの結合体として十分なものだなと感じた。
「KOBE鉄人PROJECT」のウェブサイトを見ても、
運営NPOはじめ地域住民、行政のきちんとした熱意が伝わってくる。
そもそも情報を少し付記しておくと、このモニュメントは、
「鉄人28号」の原作者で地元出身の漫画家である故・横山光輝氏にちなみ、
阪神大震災後の復興・商店街活性化のシンボルとして2009年9月に製作された。
町では「鉄人28号」のほか、やはり横山氏の人気作である「三国志」をテーマにした
町起こしイベントも積極的に展開している。
私の住んでいるのは東京・調布市(漫画家・水木しげるさん在住)で、
調布もまさに今年は「ゲゲゲの女房」効果で、
駅前の「鬼太郎ロード」が一種の観光地として賑わった。
(鬼太郎ロードにもいくつかキャラクターのオブジェが飾られている)
長田も調布も漫画キャラの力を借りて町を盛り上げているわけだが、
我が調布は長田に大きくかなわないなぁと思う。
調布の場合は、どことなく水木人気・鬼太郎人気に授かろうという感じがある。
一方、長田の場合は、商店街・地域住民の意志の形として
能動的に鉄人28号・三国志に表したという感じだ。
「NPO法人KOBE鉄人PROJECT」を発足させ、強いエネルギーで運営もされている。
町起こし・町づくりの手法として、こうした漫画キャラを使う、
あるいは“ゆるキャラ”のようなものを新規にこしらえるというものが
すでにそこかしこで行われているが、
有名先生作のキャラクターの御威光を当てにしたり、
行政側が一方的にキャラクター制作をやって現場に落とすだけでは、
キャラがヒットしました/ヒットしませんでした、
キャラが人気が出ました/飽きられました、のような繰り返しになると思う。
やはり地域住民からの想いのエネルギーがあり、その結晶として
それがたまたまキャラクターであるのか、あるいは別の何かであるのかといった
強い流れを起こさないかぎり成功と継続はないだろう。
その意味で、新しい挑戦を展開する長田に敬意を表したいし、注目していたい。
高さ18mの「鉄人28号」モニュメント。
プロジェクト協賛企業のひとつである金属加工会社の製作による。
ものづくりの町を表明する意味でもメッセージ性がある。
一時的な展示ではなく、寄付金や協賛活動によって恒久展示を行うという。