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2011年5月31日 (火)

人づくりは「親心」から ~人財育成担当者の心得


先週末、台風2号が近づく中、大阪の企業で研修をやってきました。

今回の研修のご依頼をいただいたのは
会社の人事部(人財開発部)ではなく、労働組合からでした。

「働くこととは何か?」は労働組合にとっても、本命中の本命のテーマ。
その企業では、会社(人事部)が行う研修体系の中にキャリア教育関連のものがなく、
ならば組合でそれをやってあげたい、という背景からです。

入社3年目の組合員(社員)数十名が全国から研修所に集まり、
1泊2日のうち、2日目を私の研修プログラムにあてました。

「キャリアマインド研修」
~“仕事・働くことって何だろう”をレゴブロックで考える

と題した研修は、
概ね、企業の人事部から依頼される場合と同じプログラムで組んだのですが、
今回は少し“ゆるめ”でつくりました。
というのは、人事部主催の研修というのは、どうしても業務の一環ということもあり、
研修設計への要請として「成果物を出させるようにしてください」、
「目標を書かせるような欄をつくってください」、
「5年後のありたい姿を記入させてください」のような事項が出てきます。

まぁ、それ自体は悪ではありませんが、どうしても受講者からすると構えてしまう。
その点、今回は組合主催ということもあり、
そんな成果物の提出・目標記入ワークなどは一切省きました。
その分、とてもリラックスしてプログラムを終えられたような気がします。

「働くとは何か?」という人生の問題は、多分に個人の価値観の領域ですから、
会社側は社員がどんなことを書くのかを知りたがるのは理解できますが、
何かと“吸い上げる”のはかえって逆効果な場合があります。
それに会社側の悪いクセとして、
何事も「計画的に目標を持って」ということをよしとする考え方が支配しています。
もちろん事業はそうでなければなりませんが、
個人のキャリアについては、「プランド・ハプンスタンス理論」のようなものがあるとおり、
偶発性が無視できないものです。

私は「よいキャリア形成」というのは、
計画のあるなしではなく、「想い」のあるなしだと思っています。
ですからプログラムも、働くことの「想い」(ベクトルやイメージ、そして意味)を
肚に据えることを重点的にやっています。
だから、私個人は(キャリア研修はスキルトレーニングではないので)
受講者の提出物を設けるとすれば、感想文だけでいいと思っています。
会社側はその感想文から伝わってくる「熱」(もちろん熱い感想文もあれば、冷めたものもある)
をいろいろと感じるだけで十分なような気がします。

さて、それにしても、
今回の研修がとてもいい雰囲気の感じで終えられた一番の理由は、

この企画をした労働組合の委員長、書記長、運営委員の方々の
“思い”ではなかったと思いました。

もちろんこの合宿研修の目的は、組合への理解というものが第一にあるわけですが、
それ以上に、
2日目の研修で「仕事・働くこと」について何かしら感じ取っていってほしい、
今後この子たちがたくましく一職業人として育っていってほしい、といった
「親心」にも似た思いがいろいろなところににじみ出ていたということでしょうか。

彼らの親心めいたものは、
この研修の依頼をいただいた最初のメールからすでに私は感じ取っていました。
研修の意図や背景、そして、どう私のプログラムを知り、
なぜ私のプログラムを選んでいただけたのか、などを丁重にメールでくださり、
そこには手作りで予算は限られているが、
少しでも組合員のためによい会を開催したいという真摯な思いが詰まっていました。

* * * * *

人財育成、つまり「人づくり」をやる側のもっとも大事な基本は、
やはり「このように育ってほしい」という“親心”なのだなと再認識しました。

私のところには、研修依頼の問い合わせメールがさまざまに舞い込みます。
たいていは人事部の人財育成/人財開発担当者からです。
私のやっているプログラムが「仕事・キャリア・働くとは何か」、
「自律したプロフェッショナルとはどういうものか」といった
マインド・観醸成のものだけに、特に分かりやすいのですが、
おおよそ最初のメールでその担当者の親心具合がわかります。

メールの内容で、キャリア関連の研修をやりたいが、
資料はあるか、実績企業はどこか、料金はいくらか、といったように、
いかにも研修の外側の部分だけを問い合わせてくるような場合、
担当者の親心はあまりないように思います。
で、実際、そういった担当者にお会いしてみても、
何か機械的に数社の情報を集め、比較して依頼先を決めているようなことが多い。

親心のある担当者は、最初のメールで、自身の問題意識や動機を必ず語ります。
これこれこういう問題意識や動機があって、
それに見合うプログラムを探していたところ、
ここ(私のサイト・私の書籍)にたどり着いたので問い合わせします、といったような。
親心のある担当者であればあるほど、
実際にお会いして話したときに、その問題意識や動機をめぐって話は尽きなくなります。


さて、人財育成担当者は総じて仕事熱心な人が多いのですが、
仕事熱心が必ずしも親心の大きさにつながっていない場合も多いと私はみています。

人財育成担当者の中には、人事を「戦略」で熱心に語る人がいます。
こうした人は、どことなくヒトを戦略のための素材・資源とみる傾向があって、
個々の人間の有り様をあまり気にかけない傾向性があります。

また、人事を「制度」で熱心に語る人がいます。
制度設計にとても関心が強い人は、
ヒトを「スペック(人材要件)」でとらえる傾向性が強くなります。
スペックを細かく記述して、個々の生の人間をそのスペックにはめ込んで、
組織総体の人づくりを考えようとします。

また、人事を「知識・理論」で熱心に語る人がいます。
「今年の管理職研修は、サーバント・リーダーシップをやろう」とか
「コンティンジェンシー理論をやろう」とか、
「モチベーション理論なら、最新のこの先生に来てもらおう」とか、
そういった理論系コンテンツに傾倒する人ほど、
自社の社員をどんな人財に育てたいのかを、自らの言葉とイメージで保持していません。

人をつくるということに対して「親心」のある方は、
戦略を超え、制度を超え、知識・理論を超え、
豊かにふくらみをもって「こういう人財になってほしいな」という包容力・愛情があります。
それは30分ほども話をすればわかります。
その包容力・愛情が、研修プログラム選びの真剣さになります。
その真剣さが、最初の問い合わせメールに自然とにじみ出てくるものなのです。
そして最終的には、研修の場の空気にも影響を与え、
組織全体の人づくりにも影響を与えていきます。

私は、もっともっと「親心」をもった人事担当者が増えていくことを願っていますし、
そうした担当者に多く出会っていくことが楽しみでもあります。




 

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