「自立」と「自律」の違い
私は「自律的な働き方とは何か?」「自律と自立の違いは何か?」を説明するのに、
3+5=●
●+●=8
の2式を用いています。
〈閉じた質問・閉じた業務〉
3+5=●は、いわゆる「閉じた質問」です。
誰が答えても、正解は「8」。
閉じた質問において、回答者が要求されることは、
・きっちり四則演算(というスキル)を習う
・速く、正確に答えを出す
・そして量をこなす
閉じた質問において、回答者は「処理作業」を行い、
個性を求められることはありません。
これは日ごろの業務で言えば、定型の仕事をこつこつやる、
または、過去の方法を踏襲して無難に仕上げる仕事ではないでしょうか。
〈開いた質問・開いた業務〉
一方、●+●=8は、「開いた質問」です。
答える人によって、「2,6」「4,4」・・・と様々出てくる。
開いた質問において、回答者が要求されることは、
・四則演算(というスキル)を習得しているのは前提として
・与えられたゴール(=8)に対して、自分なりの組み合わせを考える
(なぜその組み合わせなのかの理由も付けて)
開いた質問においては、回答者は「創意工夫+判断作業」を行い、個性が求められる。
これは日ごろの業務で言えば、
やることのミッション・ゴールは決められているが、
そこにどういう方法・過程でたどり着くか、
効率・効果性も合わせて実行する仕事だと思います。
〈さらに開いた質問・業務〉
さて、●+●=○を、さらに開いた質問と呼びましょう。
この場合、回答者は、右辺(=○:ミッション・ゴール、たどり着く先)
も自分自身で設定する、
そして、それを実現するための左辺(●+●:プロセス、実現方法)も
自分で考えて、実行するという形です。
さらに開いた質問において、回答者は「課題発見+目的設定+創造+判断作業」を行い、
より強い個性+やりきる力が求められます。
これは日ごろの業務では、
過去のやり方に安住せず、新しいアプローチで、
新しい商品・サービスを生み出し、新しい顧客をつくりだす仕事だといえます。
* * * * * * * *
自立と自律の区別は、世の中で明確にされているわけではありませんが、
私は次のように解釈しています。
「自立」は、
・self-standing(自力で立つことのできる)
・他に依存しないで、自分でやっていける
・主に経済的自立、技能的自立をいう
他方、「自律」は、
・self-directing(自分で方向付けできる)
つまり、自力で立った後は、自分が決める方向に進んでいけるということ
・“律”とは、規範やルールのこと。
つまり、自らの価値観を持って、そしてまた組織全体の価値観との整合性を図りながら、
目的と手段をつくり出し、進んでいける。
そして他にもはたらきかけることができるということ。
したがって、意識的な自律をいう
こんなことから、私は、上の数式をメタファーとして、
・3+5=●は、自立レベル
・●+●=8は、半自律レベル
・●+●=○を、自律レベル
だと研修で説明しています。
キャリアとは何か?働くとは何か?仕事とは何か?―――といった曖昧模糊とした問いに対し、
学術的なキャリア論はある種の回答を与えてくれますが、
どうもハラにストンと落ちてこないところがあります。
だから私は、何かの比喩を用いて、
「原理・原則をイメージさせる」ことを重要視しています。
この数式を用いた暗喩(メタファー)もそのひとつです。
ちなみに、この数式の暗喩を発展させて
現在、研修で行なっている「レゴブロック」のゲームプログラムが出来上がりました。
それについては、別の機会に詳しく書こうと思います。