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2008年11月16日 (日)

ピーター・F・ドラッカー『仕事の哲学』

こうしてキャリア教育に関わる仕事をしていると、
よく人から質問されることがあります。

「村山さんは、ご自身のキャリアについて悩まないのですか?」と。
答えはもちろん―――「おおいに悩んでいます!」、です。

自身のキャリアをどうするか、どう拓いていくかは、
生涯にわたって継続する一大問題です。
数学のように一発明解の公式があるわけでもなく、誰しも常に悩みながら、
自分なりの正解(納得のいく状況)をつくり出していくものです。

私は「人財教育コンサルタント」であって、「キャリアコンサルタント」ではないので、
個人のキャリア形成について職業的に相談にのることはありません。
ただ、個人的にはよく相談されることはありますし、
こうしたコラムでもそれに関連したことは書きますので、
そうしたときには古今東西の名著を引き出して、
考えるヒントを差し出してあげるというスタンスをとっています。

さて、そうした名著の中で、私が最もよく引用する一人が、ピーター・ドラッカーです。
彼はご存知のとおり「経営学の父」と呼ばれ、
20世紀の産業・社会に大きな影響を与えた米国の経営学者です。
『現代の経営』『経営者の条件』など、生涯に約30の著作を残しました。
残念ながら、数年前、95歳でこの世を去りました。

私にとって印象深いエピソードは、
彼が最晩年、ある人に「これまでで最高の著作は何ですか?」と質問されたときに
「次に著す一冊だ」と答えたことです。



Photo_2 さて、きょう紹介する滋養本は、
ドラッカー名言集『仕事の哲学』(上田惇生編訳、ダイヤモンド社)です。

彼の著作はもちろん経営なかんずくマネジメント、そして社会生態学がメインテーマですが、
いろいろと読み進めていくと、キャリアや働くことを考える上で、非常に含蓄の深い言葉の数々に出合います。
本書はそんな言葉をていねいに集めてくれています。
この本の中でピンとくる言葉にぶち当たったら、その引用元の著書を本格的に読んでみることがいいと思います。



* * * * *

―――「最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。しかも、得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を要する」。 
<『非営利組織の経営』>

―――「社会は一人ひとりの人間に対し、自分は何か、何になりたいか、何を投じて何を得たいかを問うことを求める。この問いは、役所に入るか、企業に入るか、大学に残るかという俗な問題に見えながら、実はみずからの実存にかかわる問題である」。 
<『断絶の時代』>

誰しも最初の就職先、最初の配属先がそのまま天職になることは極めて稀です。
多くの人間は迷ったまま就職をし、
「この方向でよかったのだろうか」と迷ったまま働き続ける。
そうした意味で、このドラッカーの言葉は、
キャリア路線が定まらない悩めるビジネスパースンたちに安心感を与えてくれます。

ですが、そこで安心しきってもいけない。
彼は私たちに、得るべきところを知り、
数年のうちには向いた仕事を手に入れなさいよと言っています。
そしてその際、
自分は何者でありたいか、何をしたいのかをよく自問自答しなさいとも言っています。


―――「人は精神的、心理的に働くことが必要だから働くだけではない。人は何かを、しかもかなり多くの何かを成し遂げたがる。みずからの得意なことにおいて、何かを成し遂げたがる。能力が働く意欲の基礎となる」。 
<『現代の経営』>

―――「みずからの成長のために最も優先すべきは、卓越性の追求である。そこから充実と自信が生まれる。能力は仕事の質を変えるだけでなく、人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味を持つ」。 
<『非営利組織の経営』>

仕事が面白くない、職場がつまらない。
こういうとき、私たちは往々にして仕事をやらされている、
働かされていることに気がつきます。
仕事が面白くないのは会社や環境のせいと思って、ずるずると1年、2年が経っていきます。
これでは、キャリア・人生にとって極めて大事な20代、30代の時間がもったいない。

そこで意識を転換してみてはどうでしょうか。
やらされ感のあるどんなつまらない仕事にも、自分なりの卓越性を求めてみる、
あるいは、何か成し遂げるテーマをその仕事に付加する。
そして、そのために新しい能力を積極的に吸収していく。

このほんの小さな意識転換が、自分の内にある成し遂げたい本能を刺激し、
仕事や職場への向き合い方が変わる。
いま目の前にある、そのなにげない仕事が金色のチャンスに変わる可能性は小さくないのです。


―――「問題の解決によって得られるものは、通常の状態に戻すことだけである。せいぜい、成果をあげる能力に対する妨げを取り除くだけである。成果そのものは、機会の開拓によってのみ得ることができる」。 
<『創造する経営』>

問題解決ばかりに注視するだけで、機会を創造し、
リスクを負って仕掛けることを忘れたマネジメントを
ドラッカーは随所で警告しています。
これはキャリアづくりにおいても同様のことがいえます。

現状自分はこうだから、ああだからと弱点やハンディキャップの面ばかりを気にして、
それを克服してからでないと何もできないかのように気構える人は多いものです。
確かに弱み克服のための努力は大事ですし、
不足・不備の状況を補い、改善するのも大事です。

しかし、その意識のみにとらわれていたら、
人生300年あっても何か手ごたえのあることを成し遂げることはできないでしょう。
何かを成し遂げるには、チャンスを見つけ出し、
多少の欠陥があってもそこに飛び込むことでしか可能になりません。

そのチャンスを成就する過程で、
自分の弱みも克服できたり、不足分を補うこともできたりします。
私個人もサラリーマンから独立する際は、足りないものだらけでした。
しかし、今では、自分が見出した機会から得たもので、
おつりがくるくらい成長させてもらっています。


―――「今さら自分を変えようとしてはならない。うまくいくわけがない。自分の得意とする仕事のやり方を向上させることに、力を入れるべきである」。 
<『明日を支配するもの』>

自分は自分でいいと腹を据えれば随分のことがラクになるものです。
自分の「得意」を、自分の「想い」に乗せていくこと---
力強くキャリアをひらいていくための公式はそれに尽きると思います。

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