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2009年3月30日 (月)

「目利き・パトロン・孵化器」としての書店

JR中央線・吉祥寺駅(東京都武蔵野市)のサンロード商店街の中ほどに
「ブックス・ルーエ」という本屋さんがあります。
(ここは町の本屋さんと大型書店の中間イメージの店です)

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(↑ブックス・ルーエさんのブックカバー


先日そこにぶらり立ち寄ったら、
地階のビジネス書コーナーの一等地の棚に
私が07年8月に刊行した『“働く”をじっくりみつめなおすための18講義』
でーんと面陳列されているのを発見しました!
(面陳列とは、本の表紙を見せるようにして棚に立て掛ける陳列方法)

嗚呼、ありがたや。

さほどのベストセラーになったわけでもなく、刊行後年月も経っている本ですが、
並み居る新刊書を押しのけ
こうして燦然と(?)目立つ場所に置いていただいていることに感謝の気持ちでした。

(面陳列は他にも、ジュンク堂・新宿店様がいまもって『~18講義』をレジ横の柱のところでしていただいています。有難うございます!)



拙著に限らず、刊行後時間が経ったものでも面陳列を継続するというのは
その本の内容を理解し、支援してやろうとの心づかいなのだと思います。
薄利多売の書店にとって、棚の回転率は最重要事項ですが、
そこをじっとガマンしてでも「自店が押したい本」を並べることは、
書店が、目利きであり、パトロンであり、孵化器であろうとするための意思だと思います。

そうした書籍の玄人の力添えがあることにより、
私のような書き手も、いろいろな読者とつながることができます。

書き手にとっては、読者からの便りもうれしいものですが、
書店のご主人やバイヤーの方々から高い評価をいただくこと、
そして結果として面陳列のようなアクションに反映されることもそれ以上にうれしいものです。

(この紙カバーのデザインはキン・シオタニさん によるものだそうな。
通販で小売りもしているといいます)
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しかし、書店の品揃え・陳列は、
どんどん「没個性化」「短期入れ替え化」が進んでいます。

個性ある独立系書店は激減していますし、
チェーン書店は経営効率から売れ筋主体の品揃えになります。
書店が担う目利き・パトロン・孵化器という役割がますます薄れていくのが残念ではあります。

私自身に関しては、他から引き上げてもらうばかりでなく、他書を盛り立てることをできうるかぎりやろうと思っています。
特に書店にはほとんど並ばなくなった古典・良書の類は、自著の中でどんどん引用していくつもりです。

日用雑貨品がプラスチック製に代わり
どんどん生産され、どんどん使い捨てにされていくように
本の世界も
即席のノウハウや成功を誘うものが
どんどん製本され、どんどん書店を通り過ぎていく。

古い木製の家具が長い間、大事に使われることによって味わいを増し、
人生のよき宝になるように
本においても、長い間、読み継がれるべき良書というものがあまた存在します。


消費されえない良書、
その書き手になりたいと自分自身は思いますし、
同時に、そうした良書の目利き・語り部として世の中に骨のあるコンテンツ発信をしていきたいと思っています。

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