よいプロフェッショナルがもつ「おすそ分け」思想
昨晩は、調布・小金井・三鷹の三市民が楽しみにしている年に一晩(3時間限り)の「野川桜ライトアップ」イベントがありました。
(写真上:写真左は昼間の様子)
野川は、国分寺崖線の湧水にその源を発し、国分寺市、調布市、小金井市、三鷹市、狛江市、世田谷区を流れ、多摩川へと合流する一級河川です。
一級河川とはいえ、両岸は野草に覆われ、さまざまな野鳥が棲み、遊歩道(兼サイクリングロード)が延々続くのどかな川です。
今時期は、桜と川べりの菜の花が絵になる景色です。
そんな季節に行われるのが「野川桜ライトアップ」。
野川の桜並木(調布市佐須町付近)約650mに照明を当て、
散歩鑑賞するというイベントです。
夜桜照明か、なーんだ、それならどこでもやってる、と思ってはいけません。
私も夜桜はたくさん観てきましたが、おそらく
その圧倒される美しさ(特に花の白のまぶしさ)は、ほんとうに「日本一」だと思います。
(私だけでなく、たぶん来た人はみんなそう確信してると思います)
ここの夜桜照明が日本一のまぶしい白の美しさを出すのは、なぜか?
それは、使用している照明機材にあります。
機材の詳しいスペックは素人なので分かりませんが、
映画やCFなどの撮影に使う高輝度の大型ハロゲンライトです。
一基でも相当にまぶしい出力がありますが、それを惜しげもなく何十基と設置しています。
(ですから、大型の発電車も稼働させています)
写真をやる方ならご存知のとおり、
ハロゲンライトは太陽光に近いため、色かぶりがなく、桜の白がくっきり白に出ます。
それが、夜空の黒の中に浮かび上がる景色は荘厳です。
そして、水面(みなも)には、それが反射して写り込む。
しかもそれが川の両岸650mに渡って続く。
・・・とまぁ、この美しさは現地で目の当たりにしないと実感できないものですが、
これを読んでくださる方は、来年は遠出してでも来る価値は十分ですので
是非、注目していてください。
* * * * *
で、前置きが長くなりましたが、本題はここから。
このライトアップ、今年で19年目になるのですが、どこが主催しているのか?
実は、いまでこそ来場者が増えすぎたため、
調布市がある部分サポートし、警察署などが協力して交通誘導などをしていますが、
基本的には、スタート時からすべてボランティア運営です。(入場も無料)
その強力で大型のハロゲンライト機材、一台あたり相当な価格のものだし、
その台数を考えると設置コストも大変なものです。
しかし、それらは「アークシステム」という照明会社が自腹でやってくれています。
機材導入も設置も撤収も。
(一般的な作業に関しては、市民ボランティアの力も借りています)
ことの起こりは、19年前、当時野川沿いに事務所を構えていたアークシステムさんが
社員の花見用として、野川の桜の木一本にハロゲン照明を当てて楽しんだ。
そしたら、その白く浮かび上がる美しさが近所の人の評判になって
照明の数を増やしていくことに。
そして、口づてにどんどん人が集まり出し、照明の数を増やし、今に至る。
今のイベント規模になると、
その運営コスト・労力負担、リスク負担(機材は雨に当たるとダメになる)は
相当なものになると思いますが、アークさんはやり続けてくれています。
ほんとうに有難うございます。
人によっては、結局、それって照明会社が技術力を誇示して
営業に結びつけるデモの一貫じゃないの、という見方があるかもしれません。
しかし、私は、このイベントの自腹継続は、アークさんのまごころというか、
「おすそ分け」の気持ちからきていると思っています。
「自分たちだけできれいな花見を楽しんでいるのはもったいない」
「近所の人がよろこんでくれるなら、どんどんやってあげよう」
「そして、どんどん人が集まってきて、名物行事にでもなれば自分たちもうれしい」
―――単純にそんな気持ちの発露からやってくれているんだと思います。
真に優れたプロフェッショナルというのは、
みずからの専門技術や知識の供与において、報酬に拘泥しないのが原義です。
*「プロフェッショナルの原義」については、本ブログのここで触れています。
私は、プロは安い報酬で奉仕せよといっているのではありません。
お金を持っている人からはそれなりに(高く)いただけばいいし、
お金のない人にはそれなりに(安く)してあげればいい
と言っているのです。
その理想像は「赤ひげ」先生です。
(医は仁術であるとして、貧乏な患者からは治療費・薬代を取らない)
「プロの技」と「私欲のない社会精神」が結びついたとき
私は、そのプロフェッショナルをカッコイイと思う。
アメリカなどで法外な顧問料を取ってそれを誇らしげに語る弁護士やコンサルタント、
あるいは、GMの某会長のように多額の退職金を受け取ろうとしている経営者、
それらはカッコ悪いプロフェッショナルだと思いますし、
プロフェッショナルの原義にそもそも反しています。