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2009年4月28日 (火)

二十歳の顔・五十歳の顔

Sora02
私は自分がやる研修でいつもこの言葉を紹介しています。

「二十歳の顔は自然の贈りもの。
五十歳の顔はあなたの功績」。

―――ココ・シャネル(シャネル創業者)

ほんとうに人の顔は、十年、二十年と経つうちに、その人の歴史と内容を表すものになります。

偏狭な人は顔つきも偏狭になるし、寛大な人は寛大な顔つきになる。
銀行勤めの人は銀行員っぽい顔になってくるし、ベンチャーの人はベンチャーの顔になる。
職人の方はいやおうなしに職人顔になる。
漁師一筋、農業一筋の方々は、味わい深き漁師顔、農夫顔になる。
また、役人には役人然とした顔というのがあるように思える。

顔は目で見てわかりやすいものですが、目に見えないキャリア(職業人生)でも原則は同じ。
十年、二十年を経るうちに、確実にその人の内実を表すようになる。

だから、五十歳の時点で、どんな仕事に就き、どんな内容のことをやっているか、
そしてそれまでにどんなものを世に残してきたかというのは、
実は、自分のそれまでの生き方を表明していることにほかならない


そんな意味を込めて、私はシャネルの言葉をこう言い換えて受講者に伝えている。

二十八歳までのキャリアは、勢い。
二十九歳からのキャリアは、意志。
そして、五十歳でのキャリアは、あなたの人生の作品。


「人生の作品」とは、仕事上で成し遂げた数々の実績はもちろんそうですが、
その人の人格・人間性を含めて考えたいと思う。
働くことはその人自身をつくりあげる作業でもあるからです。

* * * * * *

二〇代と三〇代(正確には上に書いたとおり28-29歳あたりが重要な境目)とでは、
仕事・キャリアに向かう意識をがらり変えなければなりません。
自分に問わねばならない問題の質が根本的に変わるからです。

何十年と続く職業人生を航海に例えるなら、次の三つが求められる。

○自分という船を強く性能よく造ること
○ぶれないコンパス(羅針盤)を持つこと
○地図を持ち、そこに目的地を描くこと


一番目は、つまり知識・技能・経済力をどう身につけていくかという「自立」の問題です。
二番目は、働く上での主義・信条・哲学・価値といったものをどう築き、
どう自分を方向づけしていくかという「自律」の問題になる。
そして三番目は、自分の仕事に意味を与え、
どんな目的に向かって自分自身を導いていくかという「自導」の問題です。

二〇代での最優先課題は船をきちんと造ること、すなわち「自立」だから
分かりやすいし取り組みもしやすい。根気があれば何とかなる。

しかし、三〇代以降に求められる「自律」や「自導」の問題は、
決して一筋縄ではいかない作業となる。

みずからの価値観をまっとうに醸成し、ぶれないコンパスを持つこと。
中長期の視野に立って創造的意志を起こし、自分が目指す方向性や像を地図として描くこと。
それと同時に、そこからの逆算で不足する知識や技能を新たに習得して、船を補強すること―――
これらは、もはや「自分の仕事観」なしには解決のできない問題です。

世の中には、知識本やハウツー本・成功本が数多くあります。
しかし、自分に仕事観をつくらない状態では、これらの本に翻弄されるだけになる。
常にそういう類のものを読んでいないと落ち着かない、あるいは、
玉石混交の中からいいものを判別できないといったことです。

仕事観をつくることで初めて、
知識・技能・ハウツー情報に「頼る・振り回される」から、
「活かす・取捨選択できる」へと変わることができる。


また、もっと重要なことは、
よい仕事観をつくれば、よい仕事観をもった人たちに引き寄せられ、
よい仕事チャンスに恵まれるようになること。

そうした中でコンパスがつくられ、地図に目的地が描けるようになってもくる。
二〇代終わりから三〇代にかけてこの回路に入ることこそ、
その年代にいる働き手が得るべき最重要のものである。


【すべてのビジネスパーソンへの問い】
□就職時の勢いにまかせて、いつしか仕事・職業人生を考えることがおざなりになっていないか?
□船の細かな性能向上(=知識・技能習得)ばかりに気を取られて、
コンパスをつくること、地図を持ち目的地を描くことを忘れていないか?
□社内・社外を問わず、仕事観を共有できる人びと(=同志)と出会っているだろうか?

【経営者・上司・人事の方々への問い】
□一人一人の働き手が、みずからのコンパスを醸成できるよう、また地図に目的地を描けるよう刺激しているか?対話しているか?
□あなたの組織という港には、性能はそこそこいいが、コンパスを持たず、目的地を描くこともできずに、大海原を渡っていけない船がたくさん停泊しているのではないか?

Sora01
雲が変わった。夏の雲到来

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