留め書き〈011〉 ~本閉じて思考のさざ波立てり
上の言葉は、
米国の作曲家アーヴィン・バーリン(Irving Berlin、1888-1989)の名曲
“The song is ended but the melody lingers on.”
(歌終わりて、旋律残れり)
にならって書いたものだ。
“The book is closed but the thoughts ripple on.”
(本閉じて、思考のさざ波立てり)
よい書物というものは、閉じた後に判る。
自分の内に思考のさざ波が立ち、アタマの中をざぶんざぶんと反復する。
波はおさまるどころか、どんどん増幅され、いよいよ眠れなくなってしまう。
同じように、力ある言葉も、放たれた後にこそ真価が顕われる。
“The words are thrown off but the spirit lives on.”
(言葉放たれて、言霊生き続けり)
また、言葉は種として心に落ちて、そこで思想の大樹として大きくなることもある。
“The words are put and the meaning grows on.”
(言葉落ちて、意味育ちゆけり)
よい本、よい言葉を摂取することは人生の楽しみであるとともに重大事である。
そして、みずからも読み手の内に波を起こせる本、種となる言葉を創造したいと願う。