6) 人財育成ビジネスへの視点 Feed

2008年5月 7日 (水)

人財の離職と根付きの問題<2> 保持から絆化へ


前回から引き続いて、ヒトの離職と根付きの問題に触れます。

この問題で、組織の人事に関わる方々へのメッセージは下の3つでした。


1)すべては“働くマインド”という意識基盤をつくりなおすところから

2)人財はリテンション(保持)からボンディング(絆化)へ

3)安すれば鈍する:野ガモを飼いならすな


今回は2番目の項目についてです。


◆広がる「リテンション」のニュアンス
ところで、

人事の分野で「リテンション」という言葉はすでに一般化されてきました。

と、同時に、意味が拡大化されてきているようにも思えます。


リテンションとは、本来、

保持したい特定の人財、例えば、ハイパフォーマーや

競合他社に引き抜かれてはまずい高度な専門知識人など、

といったターゲットを設定し、

彼らに物理的報酬なり心理的報酬なりを用意して、

その流出を防ぐ施策をいいます。


ところが、現在では、

そのリテンションの対象が全社員まで広がり、

ともかく「うちは離職率が高いな。人の採用にも高いコストが

かかってるんだ、何とかせい!」などと、

社長や役員から発破がかかって、


「はてさて、社員の引き留めに何か手を打たねば

(自分の職責が問われるゾ・・・)」といった現場担当者から

にじみ出る雰囲気も感じられます。


いずれにしても、リテンションという言葉は、

限定的人財の留保施策から

従業員を広く辞めさせない諸施策へと含みを拡大しつつあります。


◆3年で3割は今に始まったことではない

で、後者の部類に属すると思われる、例の「3年で3割が離職」問題ですが、

私はまず、その統計数値自体に

オドオドする必要はないのではないかと思っています。


「3年で3割が離職」は、周知のとおり

厚生労働省の『平成17年版 労働経済の分析』の中で詳しく指摘されています。


それをみると、大卒の採用者について、

入社後3年目までに辞めていく数値は、

10年前でもやはり30%弱あったわけです。

ここ数年、急に離職率が高まったということではありません。


しかも、同分析書の中の他の部分で紹介されているとおり、

そうした若年層労働者の転職動機として、

「もっと収入を増やしたい」は少なからずの回答率(25%程度:第2位の回答)

に上っていますし、

また、働く目的については、

「自分の能力をためす生き方」が減少する一方、

「楽しい生活をしたい」が大幅に増え(37%程度)、

第1位の回答となっています。


これらの回答をする人たちをひっくるめて、

功利的だとか、快楽的だとかの決めつけはできませんが、

そういう時代特性、ジェネレーション特性があるのだということを含めて考慮すると、

3割が辞めていくという数値は、驚くべき値ではなく、

自然現象として起こってしまう率なのかもしれません。


ましてや、転職紹介ビジネスは高度化し、情報流通量も格段に増えました。

しかも、人手不足が深刻化している社会情勢です。

当面、3年目の離職率3割台継続は必至でしょう。

(人によっては、早晩40%を超えるという分析予想もあります)


しかし、背景・要因はともあれ、人財が流動化するということは、

新しく人財を採りなおすという新陳代謝のチャンスの面もあります。

第二新卒の転職市場が活況を帯びているのもそのためです。

だから「3年で3割が・・・」という数値だけをみて、

それを問題視するのはあまり意味がないと思います。


加えて、ヒトが辞めないで、組織に長く根付くことが全面的にいいことなのか、

これも両面の議論があります。

詳しくは、次回触れますが、同じ根付くにしても、

よき人財が根付くのは歓迎ですが、

どこにも行きようのない市場価値の低い人材が、

保身・依存心で根付くことは歓迎できません。


そう考えると、ヒトのフローの問題へのアプローチとして、

「離職率が高いのでそれを下げよ=辞めていこうとする人間をリテンションせよ」

という茫漠としたテーゼではなく、


「いかにして、採るべきは採り、育てるべきは育て、

離すべきは離し、留めるべきは留め、出すべきは出すか」という

明確な意志を伴ったテーゼへと変換する必要があります

◆心的引力によってヒトを留める

その際、その組織には“明確な意志”の基軸となるものが要ります。


・・・・それは経営者を発信源とする理念・哲学であり、

それが浸透した結果の組織文化です。


株式会社をはじめとする事業営利組織は、荒波をゆく船に譬えられます。

乗船人員のキャパシティは有限ですから、

誰を乗せるかは重要問題です。

そして誰を降ろすのかも、同様に重要問題です。


乗船の適格要件の最もベースに置くべきは、その組織が持つ理念や文化を

理解し、納得し、共感・共振できるかどうかではないでしょうか。


ヒトを物理的報酬や心理的報酬で、囲い込む・引き留めるのは、

決して怠ることのできない方策ではありますが、

それらは本来、対症療法的な二の次の策です

与える報酬の切れ目が縁の切れ目となることも往々にしてあります。

根本の策は、共感・共振といった“心的引力”(=絆)によって、

留まってもらうことでしょう。


ここで私が用いる「絆」とは、

働く個と組織の間に生まれる信頼や尊敬、安心、互恵、恩義といった

心持ちの相互形成をいいます。


働き手側からの平易な言葉で表現すれば、

・「私を活かしてくれる会社(だから有り難い)」

・「私をこうやって育ててくれる環境(って、ほかにそんなにない気がする)」

・「仕事の要求は厳しいが、きちんとそれをわかってくれている会社」

・「会社の目指すところに共感が持てるし、

  それを仕事としてやれるのは誇り・楽しみである」

・「この経営者の下でやれるなら本望」

・「人生のある期間を共にする“場”として、この会社なら納得できる」・・・・


このような絆に裏打ちされたヒトは、よい根付きをする人財になるはずです。

また、仮に、転職その他で組織を離れることになっても、

その後、そのヒトは、やはり直接・間接的にその組織に貢献しようとするはずです。



◆人財輩出企業は自らの人的宇宙を形成する

絆化ができずに従業員が辞めていくことを人材「流出」といいます。

絆化ができている従業員が辞めていくことを人財「輩出」といいます。


IBMやリクルート、アクセンチュアなどは人財輩出企業として有名ですが、

それら企業にとって

ヒトが辞めていくということ自体は大きな問題ではなさそうです。


ヒトを人財として気前よく世の中に輩出する企業には、

また多くのヒトが入ってくる

という逆説的な循環がそこにはあるからです。


また、そこを“巣立った”人財たちは、ネットワークを組み、

“実家”あるいは“母校”的な存在の元の組織を中心に、

“ヒューマン・コスモス”(人的宇宙)を形成します


そしてそのヒューマン・コスモスは、元の組織、

そして業界を動かす大きな力となっていくでしょう。


ヒトの離職や定着の問題をとらえるとき、

ヒトを囲いや縄(=報酬や制限)によって、

地べた(=組織内)で保持する(=リテンション)という発想枠を

一段大きくしてはどうでしょうか。


つまり、個と組織の間で絆化(=ボンディング)がなされることによって、

個々の人財は、みずからの発露によって、

その組織の心的引力圏内に自然と留まる


あるヒトは地べた(組織内)に留まり、

またあるヒトは地べたから離れ、別空間(組織外)で留まるかもしれない。


そして彼ら人財たちは互いに人的宇宙を形成し、

その組織を有形無形に助けるという発想枠です。


私がイメージする「ヒトの観点から優れた会社」というのは、

やたら塀や柵で囲ってヒトを居付かせている様子ではなく、

ある恒星を中心として個性ある惑星があまた周回し、

ふくよかな宇宙空間を形成している姿です。


ヒトが離れていく数、根付く数への対症療法ではなく、

ヒトの離れ方、根付き方に深慮を配り、

根本の体質改善を図ることだと思います。


次回は、ヒトの離職と根付きの問題の3番目

「安すれば鈍する:野ガモを飼いならすな」についてです。



2008年5月 6日 (火)

人財の離職と根付きの問題<1>


◆なぜ若手が簡単に辞めていくか

人事・人財育成担当者の共通の悩みのひとつは、

人財の流動化に伴う若手従業員の離職率の高さ

(=ヒトの根付きの悪さ)問題です。


・「入社1年、2年でいとも簡単に辞めていく」

・「3年で3割離職のほか、中途入社者の定着もよくない」

・「育ち盛りの4年目以降も、なにかソワソワしていて、

  いっこうに根付くような安定感がない」

・「異動希望制度や公募制度も持っているが、

  離職止め効果に一部の効き目しかない」

・「彼らの行動変容・思考変容をもたらすには、

  若手の研修にスキル習得・知識吸収ではない“何か”を

  施さなければならないと思う」・・・等々。


ヒトの離職と根付きの問題は、深く悩ましいものですが、

私が人事担当の方々にセミナーで話していることの要点は下の3つです。


1)すべては“働くマインド”という意識基盤をつくりなおすところから

2)人財はリテンション(保持)からボンディング(絆化)へ

3)安すれば鈍する:野ガモを飼いならすな


これらを以降3回に分けて書きたいと思います。



“働くマインド・観”の醸成がほったらかしの状態

まず私は、個々の働き手がキャリアを形成していく要素を

3つの層に分けて考えます。

(実際は3つに明確に分離できる層ではなく、

虹のように多色がグラデーション的に構成されるようなものですが)


【第1層】知識・技能(スキル):“HAVE”要素

【第2層】行動特性(コンピテンシー)・態度・習慣:“DO”要素

【第3層】マインド・観:“BE”要素


入社3年目や5年目にかけては、誰しも第1層、第2層は育ち盛りです。

仕事の場数を踏み、知識・技能研修を受けつつ伸びていく。


しかし、第3層という働く意識の地盤はなかなか形成されず、

それがぜい弱なまま、時が過ぎるのがおおかたの3年目、5年目でしょう。


たまたま、影響力のある上司の下で働くことができたり、

経営者の強烈で明確な哲学によって直接・間接に感化を受けたり、

自己啓発で自分なりの働く思想的なものを醸成したりして

第3層を形成することのできる人は、世間ではごくマイナーな存在です。


第1層、第2層は、他者からの教育が可能ですが、

第3層は、“自育”が原則です。

しかし、その自育を促してやるのは、組織側・経営側の問題です。


組織側は、とりあえず若手従業員が業務をこなしてくれるように

1層・2層への教育には手を施しますが、

3層に関しては、個人の問題であると放置しがちになります


一方、働く本人たちも、知識やスキルが一人前についてきたこと、

あるいは、ただ多忙に働いていることだけで、

何か仕事のできるプロになったんだという勘違いを起こし、

マインド・観への自問をしようとしない


それでも、1層・2層に関して、自分の棚卸しをし、

現職での仕事成果をそこそこに語ることができれば、

人手不足の昨今、情報をいろいろに集めて、人材紹介会社のドアをたたけば、

年収アップの転職がすんなり状況がある。


今の若い働き手の職選び・キャリア行動を観察してみると、

意志的・思惟的な基盤づくりへの進行がみられず、

功利的・反応的な“気分”によって流動し、

それをますます先鋭化させ(させられ)ている現状が感じられます。

(この傾向は、大人を含め世の中全体がそうなっているのですが)


◆組織と個が価値・目的の共有を図っているか

下図に「働く個」と「雇用組織」の理想状態を描いてみました。

060031p_2


個は、みずからの第3層を自律的に醸成し、

他方、組織は、従業員の第3層の自育を促す形で、

双方の価値・目的を共有化することが理想形となります。


ところが、現状は下のとおり

個々の第3層の醸成がおざなりになったままなので

個と組織の間での価値・目的の共有化がなされず

双方の結びつきは極めて脆弱な状態になっています。

060032p

そして、揺らぐ働き手たちは、

外部の雑多な転職情報の風に吹かれ、

あるいは、現職・現環境への不満や不安に対し辛抱がきかず、

安易に転職カードをきってしまうわけです。



組織内にカッコイイおじさんがいるか

したがって、揺らぐ若年層従業員たちの離職(安易な転職)を減らし、

人財として組織に根付かせるためには、

個々における第3層の醸成が必須です。


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第3層は、自育が原則ですから、

まずもって個々の働き手がそのための行動を起こすことが求められます。

(そのきっかけを与える研修を開発するのが、まさに私の事業でもあります)


しかし、個の意識醸成のみでは不十分です。


組織側は、働く自律マインドの醸成を個々に促すよう

経営者や現場のマネジャーたちは、

肉声で「働くことの意義・思想・哲学・ビジョン」を語らねばなりません。


また、中高年社員たちがカッコよく働いているロールモデルが

社内のそこかしこに存在せねばなりません。

「年次が上がって、ああいうサラリーマンにはなりたくないよな」

と思われる人ばかりの組織に、

誰が永く勤めたいと思うでしょうか。

転職市場で自分が売れるうちに、どこかほかへ移ってしまおうとするのは

無理のない話です。


また、人財配置や異動の制度、処遇制度、育成システムなど、

制度・施策面の充実は言うに及びません。


そして忘れてはならないのは、

この組織は、働く1人1人とともに、

価値と目的をきちんと共有化していきたいという「姿勢」を示すことです。


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ヒトを根付かせ、人財として成長させていくには、

これら4つの要件に手を打ち、循環させてこそと感じます


すなわち、「個の意識」が変われば、その「組織文化」は変わる。

そして、その組織文化は、新しい「制度や施策」を生み出す。

そして、その制度・施策は、「個の意識」をさらに変えていく。

同時にその間、個と組織は、価値や目的の共有化を進め、深めていく。


ヒトが浮気性にどんどん流動していく、

そのやっかいな問題を解決するには、即効性のある妙策はなく、

実に地味で、中期的・継続的な手配りがあるのみではないでしょうか。



<補足>ヒトをないがしろにする組織の構図


最後に補足です。


世の中には、ヒトを大事にしない組織も多いようで、

下の図のような構造になっている企業も少なからず存在します。


060035p



つまり、

その組織の主目線は、売上・利益にあり、

その数値越しに、株主と顧客がいます。


そして、個々の働き手のマインド醸成などには関心を示すことなく、

働き手の能力のみを、売上・利益創出のための部品か何かととらえる。

そして個々の働き手の目線は、目先の成果目標に向かされる

・・・そんな組織です。


多少、いじわるな見方ですが、

実際このような構図になってしまっている組織は多いものです。


さて、次回は、

「人財はリテンション(保持)からボンディング(絆化)へ」

について書きます。



2008年4月 7日 (月)

ヒトを全人的に育てる思想


【沖縄・石垣島発】


◆ホンダの人財育成思想:OCT
あるとき、ホンダのマネジャークラスの方にお会いして

“OCT”なる言葉を聞きました。


――――「OCT(オン・ザ・チャンス・トレーニング)」


「人は育てられるのではない、自ら育つ」というスタンスに立ち、

会社側はそのための環境とプロセスを整えること、

これがホンダの人財育成の根本思想だというのです。


確かに、ホンダの歴史をみても、

例えば、1959年(創業11年め)、伝説の「マン島TTレース」参戦では

メカニックもライダーも全員20代。

人選も「やりたいやつは手をあげろ!」「はいっ!」で決まったといいますし、


同じく、59年、やはり30代の一人の課長(白井孝夫氏)に

鈴鹿工場建設のすべてを、

本田と藤澤の経営側は一任しました。

白井課長は、その勉強のために

「おまえ、しばらくヨーロッパに行って来い」と言われたそうです。


それと同時に、ホンダの有名な文化として、


『三現主義』:

・現場に行け

・現物、現状を知れ

・現実的であれ


『自己申告主義』:

研究や開発は、アイデアを出した人がそのテーマの責任者となる

いわゆる“言い出しっぺ”がリーダー


こうしたことがベースになって、

「チャンスの中でヒトは勝手にしぶとく育っていく」というホンダのOCTが

組織の中に、人財育成“思想”として根を張っているのだと思います。


これは思想であって、

人財育成戦略とか、戦術とか、施策などという

何か仰々しく、カッコつけて実行しているものではなく、

組織体に染み込んだDNAレベルのもののように感じます。


その大本である本田宗一郎さんも、

・「創意発明は天来の奇想によるものではなく、

せっぱつまった、苦しまぎれの知恵である」

(だから、人を2階に上げておいて、はしごをはずせば、いい知恵がわく)


・「見たり聞いたり試したりの中で、試したりが一番大事なんだ」


・「やりもせんに」

(やりもしないで、机上の知識でものの可否を断ずるな)


など、いろいろな語録を残しています。


* * * * * * * * *


◆全人的・全体的に仕事を動かせるヒトが激減している

私は新卒で最初、文具・オフィス用品メーカーに入り、商品開発を担当しました。

入社時からいきなり担当商品を割り当てられ、

プロダクトマネジャーとして、

アイデア出し・企画から試作品、デザイン、製造、流通、

広報・広告、アフターサービスまで、

それぞれの工程の専門スタッフをチーム化して、夢中(霧中)で働きました。


この会社・この部署には3年弱在職しまして、いくつかの商品を

世に送り出したわけですが、結果的に、ここでの経験が、

その後の私の全てを育ててくれたといっても過言ではありません。


ちなみに当時の私の直接の上司(部長)は、

アスクル株式会社を立ち上げられた岩田彰一郎社長です。

プラス株式会社の今泉公二副社長とともに、このお二人は、

まさに私にとっての本田宗一郎的存在でした。


私の場合、職業人として何年も経ってから、

ようやく、やれP/LB/Sだとか、やれマーケティングだとか、

あるいはSWOTだの5 Forcesだの戦略論の勉強をやりましたが、

学んだ当初、どうも、現実味の迫力に乏しく、

ひとつひとつの知識が「ギスギスとやせて」いて

腹ごたえがないように思えました。

(アタマをシャープに体系的に整理し直すという意味では、

とても有益・有意義だと思っていますが)


他方、

ひとつの完結するプロジェクトなり、大きな仕事単位を

どっさり任されることは、

全人的に、全体的に取り組まねばならない奮闘であって、

それは格好の

体験、学習、コミュニケーション、修羅場、歓喜の機会を与えてくれます。

その意味で、実に「ふくよかな」なのです。



現在、世の中のさまざまな研修教育プログラムは、

細分化の流れにあります。

これは、現在のビジネスがどんどん細分化(分業化)・煩雑化し

専門能力が欠かせないことに呼応しています。


だから、会社側も、テーマが細分化されたスキル習得研修や

専門知識の植え付けセミナーに多くの従業員を行かせます。


現在の組織内のヒトの問題のひとつを挙げれば、

ヒトがいやおうなしにどんどん「知識でっかち」

あるいは「技能でっかち」になっている中、

全人的・全体的に仕事を動かせるヒトが激減していることです。


すでに多くのミドル管理職でそれができなくなっているとすれば、

上下方向に支障をきたします。つまり、

若手に対する現場のOJTの内容は乏しいものになるでしょうし、

近い将来の上級マネジメントの人財供給にも難が出てきます。


* * * * * * * * *


◆全体論的な視点からの人財育成

還元論(あるいは機械論)と全体論というのが、科学の概念であります。


還元論は、物事を基本的な1単位まで細かく分けていって

それを分析し、物事をとらえるやりかたです。

人間を含め、自然界のものはすべて、

部分の組み合わせから、全体ができあがっているとみます。


西洋医学は基本的にこのアプローチで発展してきました。

胃や腸などの臓器を徹底的に分析することで、

さまざまな治療法を開発するわけです。


他方、胃や腸など臓器や細胞をどれだけ巧妙に組み合わせても、

一人の人間はつくれない、

全体はそれ一つとして、意味のある単位としてとらえるべきだ

というのが全体論です。

東洋医学が主にこのアプローチです。


この両方は、どちらかが良い悪いではなく、

要は、バランスが大事です。


どうも、私には、技能研修や知識研修は、還元論アプローチにみえます。

一方、ホンダの『OCT』は、全体論アプローチにみえます。


医療の世界では、東洋医学への見直しが高まっているように、

(ガンと共生する考え方や、漢方薬、ヨガなど)

人財育成も、全体論的な角度からの見直しが必要だと思います。



それは小難しいことではなく、

どんとチャンスをどんと与えることではないでしょうか。


本田宗一郎は、「やりもせんに」といいました。

サントリーの鳥井信治郎は、「やってみなはれ」

ナイキのCFコピーは、Just Do It !



私も、キャリア教育、働く自律マインド醸成教育において、

全体論的なアプローチをしようと考えています。

その詳細に関しては、順次、このブログで触れていくつもりです。





□ □ □ □ □ □ □ □ □

08年 沖縄キャンプ終了>


4月2日から石垣島で行ってきた仕事の春キャンプも今日が最終日です。

海を眺めながらの集中的な思索作業、執筆作業、再構築作業を終えて、

また東京に戻り、

研修の実施やら、関係者とのミーティングやら、普段どおりの仕事を再開します。


沖縄キャンプの期間中に撮った写真を間近にアップするつもりです。

で今度は、夏に軽井沢キャンプを予定しています。

Photo7

2008年3月18日 (火)

人事の世界を客観的にみると・・・

現在、私は、人財育成研修の開発と実施を主たる生業にしています。

実を言うと、私がこうした人事の世界に踏み込んだのは、比較的最近のことで、

大卒後22年間のキャリアの流れの中で、わずか8年前からです。

そういった意味では、いまだ“人事畑ビギナー”の部類です。

ですが、ある部分、ずっと人事畑の部外者であったからこそ、

そして、いまだ入門者レベルであるからこそ、

ものを客観的にみることができるという利点もあります。

客観的にみることができる事象として、例えば、

1)人事の仕事が、制度やシステムの「設計屋」になっていやしないか

2)人事の世界は、(特に米国発のHR論に対し)流行に侵されやすく

  日本オリジナル、組織オリジナルな思考フレームの創造を怠けていやしないか

3)人財育成に関し、人事部門は「研修の手配屋」と化しているのではないか

4)人財育成に関し、「知識でっかち」、「技能でっかち」な“業務処理人”

増やすことに懸命で、“全人的にまっとうな職業人”を育てようとする意識が

希薄なのではないか

・・・等々があります。

しかし、ここでこれら日本の人事部にみられるネガティブな面を批評するのが

私の本意ではありません。

私は、もはや、日本の人事部の部内者としてビジネスを行なう身となりました。

これからは、人事に携る方々とさまざまに交流し、

人事の世界で行なわれていることを進化・発展させていくことが本望です。

このカテゴリーでは、

現在の日本の人事部門を取り巻く問題・課題、

特に人財育成に関連する問題・課題について取り上げ、

私なりの切り口を入れて言及していきたいと思います。

なお、こういうテーマですので、読者は、

人事に関わるプロの方々、経営者の方々、部下を持つ上司の方々を想定しています。

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