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2008年3月

2008年3月15日 (土)

知識が増えて、人は賢くなったか?

  毎週発行される1冊の『ニューヨーク・タイムズ』には、

  17世紀の英国を生きた平均的な人が、

  一生のあいだに出会うよりもたくさんの

  情報がつまっている。

    ―――――――リチャード・S・ワーマン『情報選択の時代』より

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

いまの社会では、「情報増加」というよりも、

「情報爆発」といったほうがいいくらいに、

その生産量・発信量が秒単位で溢れ出しています。

インターネットに接続して検索をかければ、

パソコンの画面からは、今や無尽蔵ともいえるほどに情報が入手できます。

また、交通手段の発達や余暇の発達によって、

日常の生活空間とは異なるさまざまな場所へ行って、

多くのものを見聞し、体験できる世の中になりました。

現代人の見聞知や体験知は、

わずか数十年前の人間と比べてもはるかに多くなっています。

ですが、1人の人間が知り得る情報が増せば増すほど、

人間は賢くなるのでしょうか?

日々の仕事の質が上がるのでしょうか?

豊かな発想が湧きやすくなり、より優れた商品・サービスが生まれるのでしょうか?

また一方、情報とともに、技術・道具も止め処もない進歩を遂げています。

私がかつてビジネス雑誌の記者だったころ、

米国の有名なグラフィックデザイナーにインタビューで質問したことがあります。

廉価で高度なスペックを持ったパソコンが普及し、

今や誰でもイラストや写真などを自由に画像処理できる時代が来た。

こうした技術は、人びとの創造性を増したか?――――との私の問いに、彼は、

「いや、ヘタな絵が増えただけだ」、と。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

情報量の増加や技術の進歩が、

必ずしも人間の創造性や賢さを比例して増すものではないことは、

さまざまに語られています。

小林秀雄は、

人は“知る”ことのみをして、“考える”ことをしなくなったといいます。

「考へるとは、物に対する単に知的な働きではなく、

物と親身に交はる事だ。

物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる、

さういふ経験をいふ。

・・・物しりは、まるで考へるといふ事をしてゐない」と。

同様に、モンテーニュは、

「他人の知識で物知りにはなれるが、

他人の知恵で賢くなることはできない」と本質を突いた言葉で射す。

この「知識・能力」のカテゴリーでは、

「知ること」や「できること(=能力)」をいろいろな角度から見つめなおし、

目の前の職・仕事を切り拓いていくこととどのような関係にあるのかを

考えていきたいと思います。

2008年3月13日 (木)

人生が“もったいない!”

英語で「あなたの職業は何ですか?」というとき、

What is your occupation?」などと表現する。

occupation”・・・そう、つまり、

私たちの人生を「占有するもの」が職業というわけです。

一般的に私たちは20歳前後で就職し、

その後、約30年間以上にわたって働き、生計を立てていくことになります。

統計では、私たちは平均で1日8時間、年間では1,840時間を労働に使っています。

これに職場までの通勤時間やオフィスでの昼食時間を加えると、

平日、私たちが起きている時間の約6割から7割は

仕事に「占有」されていることになります。

これに30年超という期間を乗じると、

私たちは生涯で実に膨大な時間を仕事に捧げています。

時間だけではありません、空間も同じです。

平日に過ごすその多くの自分の居場所は職場、

そして通勤移動の乗り物が占有しています。

加えて、人間関係もそうです。

いつも隣の席にいて、業務やプロジェクトを一緒にやっている職場の上司や仲間。

彼らと接している時間は、自分の家族と一緒にいる時間より多いのです。

そして何よりも私たちの頭の中は常に仕事のことでいっぱいです。

休日であっても、食事をしている最中も、旅行中も、デート中も、

仕事のことが頭をよぎります。

仕事がうまくいっていれば家族や恋人と過ごす時間も楽しくなりますし、

仕事の状況がかんばしくなかったり、上司から叱られたりすれば

食事もおいしくありません。

そう考えると、現代人にとって、職・仕事は、

物理的な時間、空間的に過ごす場所、そして心理的な気持ち空間の

「最大級の占有者」なのです。

したがって、その人生における最大級の占有者をないがしろにはできません。

職・仕事をないがしろにすることは、

自分の貴重な人生をないがしろにすることに等しいからです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「仕事は仕事。私生活は私生活」と割り切った考え方もありますが、

私は、そうしたとらえ方には、未だにどこかしら与することができないでいます。

そこには、仕事をなにか“忌むべき苦役”のようにとらえる姿があるからです。

「人はパンのみに生くるにあらず」とは、古くからある言葉ですが、

もし、目の前の職・仕事が、本当に生きる糧を得るためだけの労役だとしたら、

本当に残念なことです。人生がもったいない!

なぜなら、職・仕事は

・生活の糧を稼ぐ「収入機会」であるばかりでなく、

・自分の可能性を開いてくれる「成長機会」であり、

・何かを成し遂げることによって味わう「感動機会」であり、

・さまざまな人と出会える「触発機会」であり、

・学校では教われないことを身につける「学習機会」であり、

・あわよくば一攫千金を手にすることもある「財成機会」だからです。

職・仕事をこれらの機会として活かさずして、

30年以上も漫然と労役として、職・仕事に自分の人生を占有され続けるとしたら

本当に人生がもったいない!

私は、生活(ライフ)と仕事(ワーク)が分離するのではなくて、

互いに刺激し合い、融和し合うことが理想だと思っています。

そして現実、それは誰しも可能なことだと思っています。

仕事が楽しいから、生活も楽しくなる。

生活の中で得たヒントを、よりよく働くためのヒントにできる。

もし、「仕事はつらくてたまらないが、

その分のうさばらしを生活面でやっているからいいや」という人や、

「生活は退屈でたまらないが、

仕事は面白くてたまらない」という人がいるとすれば、

それは、やはり、生きることを半分しか生きていない人かもしれません

仕事と生活を相互に融和できるかできないかは、

まったくもって、個々の私たちの心持ちひとつで決まります。

その心持ちについてどうすべきか、このブログでおおいに向き合って

思索を深めていきたいと思っています。

最後に図をひとつ。

これをいまお読みになっているみなさんにとって、

仕事と生活はどのような関係になっているでしょうか・・・?

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2008年3月 9日 (日)

「働くこと・職・仕事」を思索する日本一のブログをつくる!

2008年3月9日、このブログを開設します。

そして、このブログの目標は、表題に記したとおり

「働くこと・職・仕事」を思索する日本一のブログをつくる!ことです。

大胆不敵にもそう宣言してしまうのは、

このブログを単なる自己満足的な吐露に終わらせず、

ご縁あって読んでいただくみなさんと、

真摯に「働くこと」の本質を思索し合いたいという思いからです。

現在のビジネス社会においては、その変化という激流のなかで、

「働くこと」に流されることはあっても、

「働くこと」を留まって考えることがない。

そんな社会、時代だからこそ、

「働くこと」をまっとうに、きちんと考えられる思索的な情報発信点があってもいいはずだ

----それが私の起点です。

さて、

私は現在、企業や団体の従業員・職員を対象に、

キャリア教育研修を行なうことを生業としている人財育成コンサルタントです。

「働くこととは何か?」

「仕事を成すとはどういうことか?」

「目の前の職・キャリアを拓くためにはどうすればよいか?」

「“生きること”の中の“働くこと”の意味は?」など、

つまり、

よりよく働き、よりよく生きるための

働き方、働き様、働き観を醸成する教育プログラムを開発し、実施しています。

私が一職業人として、また同時に、一生活人として、

日々の営みの中で浮いては消え、浮いては消えていく「働くこと」をめぐる思索観点を

いくつかのカテゴリーに分けて、書き記していきたいと思います。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ブログ開設時点でのカテゴリーは次のようなものです。

(順次改変の可能性があります)

1)仕事/キャリア

仕事の本質論や、キャリアを拓くための意識の持ち様をめぐる観点を

包括的に取り上げていきます。

2)知識/能力

「仕事・キャリアづくりにおける能力とは何か?」を改めて見つめなおします。

3)働くマインド/観

働く上での、意識、観、心持ち、哲学、思想といったものを考えていきます。

4)組織と個人・人とのつながり

働く個人と組織との関係性、あるいは他者との関係性を取り扱います。

5)仕事の幸福論

「幸せの仕事」「幸せのキャリア」って何だろう? そしてまた、

幸せに働き続けるためにどうすればいいのだろう?を考えたいと思います。

6)人財育成ビジネスへの観点

これは人事・人財育成関連に携わるプロの方々への私からの投げかけです。

企業の研修の場で起こっていること、

あるいは人財育成ビジネスでの今日的な論点を取り上げます。

7)私の『ハイブリッド・ライフ』 ~遊ぶように働く

私、村山個人が目指す「都会と田舎の2拠点暮らし=複棲人生」の実践記です。

私なりのワークスタイル・ライフスタイル論をつらつらと書き記すものです。

8)知の滋養(読書案内)

日々の読書の中で、自身への血肉となった名著・秀作本の紹介です。

9)雑信

カテゴリーの枠に入らないもろもろの発信を寄せます。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

のブログをはじめるにあたって、私が思い出すのは、

吉田兼好の『徒然草』の冒頭の一節です。

  つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、

  心に移りゆくよしなし事を、

  そこはかとなく書きつくれば、

  あやしうこそものぐるほしけれ。

 

『徒然草』というと、誰もが中学・高校で一度は習ったことのある随筆ですが、

たいていの人にとって、この随筆は、

どことなくのんびりとした人生訓話集のイメージが付きまといます。

確かに兼好法師の記す寓話はどれも牧歌的な印象です。

しかし、いま、この歳になって改めて読み直してみると、

実に奥深く鋭い思想哲学書であることが分かります。

表面的なのんびりさ加減とは裏腹に、

ひとり兼好法師だけは、

“ものぐるほしい”(物狂おしい)ほどに、透明に鋭利に、人間社会がみえていた。

「働くこと・職・仕事」をめぐる思索において、

私も『徒然草』を理想のモデルとして、

さまざまに、“ものぐるほしく”書き起こしていきたいと思っています。

また、本ブログに対してのご意見・ご感想がありましたら、何なりとお寄せください。

【メール投函アドレス】

post@careerportrait.jp

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