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2009年4月

2009年4月30日 (木)

異次元からの触発

Prnd_1 今夏、私の仕事テーマで一番大きいものは、管理職向け研修プログラムの改良です。

このプログラムは、部課長が部下に対して
「一個のプロフェッショナルであるとはどういうことか」をいかに語るかというコミュニケーションに関わる内容なのですが、
ここで最も重要な観点は、「働くこと・プロの仕事」の原理原則を
まず部課長のみなさんに、いかに腹で理解していただけるようプログラムを構築するかです。

こういったプログラムを私は、
「スキルのリテラシー」 (読み・書き・そろばんなどの基本技能を習う)に対して、
「ワーキングマインドのリテラシー」 (働く心持ちの基本をつくる)と呼んでいますが、
いずれにしてもリテラシー教育には、押さえるべき方法論があります。

その方法論で大いに参考になるのは、デザイン関係の教科書です。

私がいま手にとって再読しているのは、
『ポール・ランド、デザインの授業』『デザインの文法』
(2冊ともビー・エヌ・エヌ新社刊)。

グラフィックデザイナーの重鎮的存在、原研哉さんが、
「デザイナーは受け手の脳の中に情報の構築を行なっているのだ」と言うように
デザインという行為は、「認知・理解を生じさせる」企てです。

ですから、デザインの“いろは”を教える本には、
優れた方法論や教育的アプローチがいろいろ詰まっています。

こうした異次元からの触発を得ることによって、
私のプログラムは重層的・多面的にテコ入れされ、差別化された要素を付加することができる。

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20世紀を代表するグラフィックデザイナー、ポール・ランドが教える言葉は
すべてのビジネスパーソンの仕事に通じる内容でもある


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「書籍は理解を生むためのメディア」ということを考えると
本のつくりや見せ方は重要な仕掛けとなるはず。
その意味で、いまのビジネス書は、どこか手抜き・思考不足なところがあるのではないか。
(自省を込めて)

2009年4月28日 (火)

二十歳の顔・五十歳の顔

Sora02
私は自分がやる研修でいつもこの言葉を紹介しています。

「二十歳の顔は自然の贈りもの。
五十歳の顔はあなたの功績」。

―――ココ・シャネル(シャネル創業者)

ほんとうに人の顔は、十年、二十年と経つうちに、その人の歴史と内容を表すものになります。

偏狭な人は顔つきも偏狭になるし、寛大な人は寛大な顔つきになる。
銀行勤めの人は銀行員っぽい顔になってくるし、ベンチャーの人はベンチャーの顔になる。
職人の方はいやおうなしに職人顔になる。
漁師一筋、農業一筋の方々は、味わい深き漁師顔、農夫顔になる。
また、役人には役人然とした顔というのがあるように思える。

顔は目で見てわかりやすいものですが、目に見えないキャリア(職業人生)でも原則は同じ。
十年、二十年を経るうちに、確実にその人の内実を表すようになる。

だから、五十歳の時点で、どんな仕事に就き、どんな内容のことをやっているか、
そしてそれまでにどんなものを世に残してきたかというのは、
実は、自分のそれまでの生き方を表明していることにほかならない


そんな意味を込めて、私はシャネルの言葉をこう言い換えて受講者に伝えている。

二十八歳までのキャリアは、勢い。
二十九歳からのキャリアは、意志。
そして、五十歳でのキャリアは、あなたの人生の作品。


「人生の作品」とは、仕事上で成し遂げた数々の実績はもちろんそうですが、
その人の人格・人間性を含めて考えたいと思う。
働くことはその人自身をつくりあげる作業でもあるからです。

* * * * * *

二〇代と三〇代(正確には上に書いたとおり28-29歳あたりが重要な境目)とでは、
仕事・キャリアに向かう意識をがらり変えなければなりません。
自分に問わねばならない問題の質が根本的に変わるからです。

何十年と続く職業人生を航海に例えるなら、次の三つが求められる。

○自分という船を強く性能よく造ること
○ぶれないコンパス(羅針盤)を持つこと
○地図を持ち、そこに目的地を描くこと


一番目は、つまり知識・技能・経済力をどう身につけていくかという「自立」の問題です。
二番目は、働く上での主義・信条・哲学・価値といったものをどう築き、
どう自分を方向づけしていくかという「自律」の問題になる。
そして三番目は、自分の仕事に意味を与え、
どんな目的に向かって自分自身を導いていくかという「自導」の問題です。

二〇代での最優先課題は船をきちんと造ること、すなわち「自立」だから
分かりやすいし取り組みもしやすい。根気があれば何とかなる。

しかし、三〇代以降に求められる「自律」や「自導」の問題は、
決して一筋縄ではいかない作業となる。

みずからの価値観をまっとうに醸成し、ぶれないコンパスを持つこと。
中長期の視野に立って創造的意志を起こし、自分が目指す方向性や像を地図として描くこと。
それと同時に、そこからの逆算で不足する知識や技能を新たに習得して、船を補強すること―――
これらは、もはや「自分の仕事観」なしには解決のできない問題です。

世の中には、知識本やハウツー本・成功本が数多くあります。
しかし、自分に仕事観をつくらない状態では、これらの本に翻弄されるだけになる。
常にそういう類のものを読んでいないと落ち着かない、あるいは、
玉石混交の中からいいものを判別できないといったことです。

仕事観をつくることで初めて、
知識・技能・ハウツー情報に「頼る・振り回される」から、
「活かす・取捨選択できる」へと変わることができる。


また、もっと重要なことは、
よい仕事観をつくれば、よい仕事観をもった人たちに引き寄せられ、
よい仕事チャンスに恵まれるようになること。

そうした中でコンパスがつくられ、地図に目的地が描けるようになってもくる。
二〇代終わりから三〇代にかけてこの回路に入ることこそ、
その年代にいる働き手が得るべき最重要のものである。


【すべてのビジネスパーソンへの問い】
□就職時の勢いにまかせて、いつしか仕事・職業人生を考えることがおざなりになっていないか?
□船の細かな性能向上(=知識・技能習得)ばかりに気を取られて、
コンパスをつくること、地図を持ち目的地を描くことを忘れていないか?
□社内・社外を問わず、仕事観を共有できる人びと(=同志)と出会っているだろうか?

【経営者・上司・人事の方々への問い】
□一人一人の働き手が、みずからのコンパスを醸成できるよう、また地図に目的地を描けるよう刺激しているか?対話しているか?
□あなたの組織という港には、性能はそこそこいいが、コンパスを持たず、目的地を描くこともできずに、大海原を渡っていけない船がたくさん停泊しているのではないか?

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雲が変わった。夏の雲到来

2009年4月26日 (日)

「目標」と「目的」の違い

Koinobori 来月刊行になる拙著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』からいくつかのキーワードを抜き出してこのブログでも紹介します。

きょうは、「目標」と「目的」の違い。

さて、日ごろの仕事現場でも、よく口にする目標と目的、両者の違いは何だろうか――――?

まず、目標とは単に目指すべき方向や状態をいう。
そして、目的はそこに意味や意義が付加されたものだ。

それを簡単に表せば:

目的=目標+意味   となる。


ここで、次の有名なビジネス訓話「三人のレンガ積み」を引用したい。

中世のとある町の建築現場で三人の男がレンガを積んでいた。
そこを通りかかった人が、男たちに「何をしているのか?」とたずねた。


一人めの男は「レンガを積んでいる」と答えた。
二人めの男は「食うために働いているのさ」と言った。
三番めの男は明るく顔を上げてこう答えた。
「後世に残る町の大聖堂を造っているんだ!」と。


このとき、三人の男たちにとって目標は共通である。
つまり、一日に何個のレンガを積むとか、工期までに自分の担当箇所を仕上げるとか。

しかし、目的は三人ともばらばらである。

一人めの男は、目的を持っていない。
二人めの男は、生活費を稼ぐのが目的である。
三番めの男は、歴史の一部に自分が関わり、世の役に立つことが目的となっている。

目標は他人から与えられることが十分ありえる。
しかし、目的は他人から与えられません。意味は自分で見出すものだからだ

何十年と続く職業人生にあって、他人の命令・目標に働かされるのか、
自分の見出した意味・目的に生きるのか
―――この差は大きい。

仕事の意味はどこからか降ってくるものではなく、
自分が意志を持って、目の前の仕事からつくり出すものだ。

もちろんその意志を起こすには、それなりのエネルギーが要る。
しかし、それをしないで鈍よりと重く生きていくことのほうが、もっとエネルギーを奪い取られる。
―――さて、あなたはどちらの選択肢を選びますか? という話だ。

ところで、先の三人の男のその後を、私が想像するに、

一人めの男は、違う建築現場で相変わらずレンガを積んでいた。
二人めの男は、今度はレンガ積みではなく、木材切りの現場で
「カネを稼ぐためには何でもやるさ」といってノコギリを手にして働いていた。
そして三人めの男は、その真摯な働きぶりから町役場に職を得て、
「今、水道計画を練っている。あの山に水道橋を造って、町が水で困らないようにしたい!」といって働いていた。



【すべてのビジネスパーソンへの問い】
□他からの目標をこなすことだけに忙しくしていないだろうか?
□目標に自分なりの意味を加えている(=目的をつくり出すことをしている)だろうか?
□その目的は、パンを得るレベルのことだろうか、
それとも町の大聖堂をつくるレベルのことだろうか?

【経営者・上司・人事の方々への問い】
□働き手に、もっぱら「目標」だけを課していないか?
□組織が持つ事業の意味と、働き手が持つ仕事の意味を重ね合わせることの支援をしているだろうか?
□あなたの組織の目的は、パンを得るレベルのことだろうか、
それとも町の大聖堂をつくるレベルのことだろうか?


拙著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』には、
このほかに79個のキーワードが用意されています。
乞うご期待!

Koinobori2
東京では町の景色からこうした鯉のぼりが消えていっている。
これはご近所宅の鯉のぼり。健やかな景色のご提供に感謝!

2009年4月25日 (土)

09年2冊目の著書を刊行します!

冬には冬の過ごし方がある―――。

世の中の不景気をもろに受けるのが、会社の「4K」費用
すなわち、
広告費、交際費、交通費、そして研修費

私が生業としている人財研修事業はまさに去年後半から真冬に突入しました。
私のお客様も何社かは、研修を取り止めたり内製化に切り替えたりして、
そこからは結果的に委託案件を失うことになりました。
(ですが、ご担当者の方々とは個人的な信頼で結ばれており、状況が回復したら、
またやりましょうよということで関係性は継続しています。それでいいと思っています)

私は、その分、時間的に余裕ができるわけですが、やりたいことがテンコ盛りです

そのうちの一つが、著書の執筆活動です。
時間ができたことで、おかげさまで今年09年は、
すでに3月に『いい仕事ができる人の考え方』を刊行し、
そしてきょう紹介する『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』を来月に刊行することができます。

で、まだまだ著したいことはヤマほど湧いてきているので、
新機軸の著作に今夏挑戦して、秋には出したいと意気込んでいます。

このように
冬には、冬にできることを大いに楽しんでやればいいのだと思います。

* * * * *

Kw80photo さて、それで、
きょう、来月に刊行する新著のAmazon予約画面が立ち上がりました。
まだ印刷製本段階にあって本の実物はないんですが、
本ブログではその内容についてどんどん触れていきたいと思います。

【書籍概要】
○タイトル:
『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』
~30歳からの働くを見つめなおす本~


○出版社: クロスメディア・パブリッシング
○価格: 1,470円(税込)
○発売日: 2009年5月14日

この本は、3月刊行の『いい仕事ができる人の考え方』と同じく、
“仕事観・働き観”に関する本です。
『いい仕事が~』は、Q&A形式になって読者の間口を広くとったつくりになっていますが、
今回の本は、副題に「30歳からの」とあるように、
多少、読者を限定して、そこのレベルに合わせて書いています。
また、1つのキーワードが見開き2ページで完結しているので、
小気味よいリズムで読んでいけるところが特長です。

本の詳細情報は、下の「INSIGHT NOW!」のプレスリリースページにアップしておきましたので、ご覧ください。

また、本著の要約資料(PDF形式)もこちらからご覧いただけます。

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次回記事から、この本の内容面の紹介をします。

2009年4月18日 (土)

“ごちそうではなく、器になる仕事を!”

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きょう、今春刊行する2冊目の本の最終校正を終えた。

今度の本は、5月連休明けあたりに店頭に並ぶもので、
「ぶれない自分の仕事観」をつくるためのキーワードを80個集めたものです。
内容の詳細はまた発売間近に本ブログで紹介します。

私は独立後、これで5冊本を出すわけですが
そのいずれもが「仕事観・働くマインド」に関わるものでハウツー・スキルものではない。
ベストセラー志向(もちろん多く売れればいいと思って書いていますが)というより
ロングセラー・定番志向でいる。

作詞家の大御所的存在・松本隆さんが語った言葉で、私がメモ帳に書き留めているものに:

“ごちそうではなく、器になる仕事を”

というのがあります。
たぶんこれは、作詞家というものは、
華やかなごちそうである歌手を、器(=歌詞づくり)として支える存在でありたい
という思いだと解釈しています。

あるいは、流行りの歌い手は入れ替わり立ち替わり出てくるが、
私は時代を横断して、いろいろな歌い手に、
さまざまな歌詞をつくっていく仕事をしたい、という不変の意志の言葉ともとれます。


私も自身の仕事を、「器の仕事」たらしめたいと思っています。
(松本隆さんご本人のニュアンスとは多少ズレるかもしれませんが)

つまり、人はそれぞれに個性を発揮した仕事をする(=ごちそうをつくる)わけですが、
それを支えたり、促進したりするための「観・マインド」醸成の本を出す(=器をつくる)
仕事をしたいということ。

また、時流に合った派手なスキル本・成功指南本(=ごちそう)を志向するのではなく、
時流を超えて重宝される良書(=器)を志向すること。


先月の本『いい仕事ができる人の考え方』にも、みずから書きましたが、

「要するに人物の値打ちだけしか字は書けるものではないのです。
入神の技も、結局、人物以上には決して光彩を放たぬものであると思います」。

                                                                                                    
                                ―――北大路魯山人


書道も著作もまったく事は同じ。
自分という人物の中身以上に本は書けないもの。
時代の波に消されないほんとうの良書を著すには、まだまだ精進だと思っています。

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